中央アジア散歩 2011年夏学期 全学自由研究ゼミナール

Just another 教養高度化機構チーム形成部門 site

ソ連の歴史教科書における日本の戦後

公開日:2011年8月11日

投稿者:uzstudent2011s

本来はウズベキスタンの現在の歴史の教科書について書きたかったのだが、手に入らなかったため文科省内にある教育図書館所蔵の”Новейшая история для 10 класса”(10年生のための現代史)(1973)を参照した。

「日本」という題で4ページ半にわたる章がもうけられており、さらに「戦後の改革」「戦後の経済成長」「外交」「労働運動 」「日本国民の平和のための闘争」といった小見出しで分けられていた。

やはり社会主義的イデオロギー色が濃いことは否めない。中小企業の労働者が大企業に苦しめられていることや格差に関する記述が多く見られる。

「急速な工業の発展は科学技術革命だけでなく日本のプロレタリアートの残酷な搾取によって説明される。国家機関が巨大コンツェルンの繁栄に協力し、免税をしたり、利益になるような注文を割り当てたり、大規模に経済改革を変更したりして国が経済における重要な役目を果たしている。」

「増大する小作農の土地に対する闘争の影響のため政府は農地改革(1946〜1949)の導入を急いだ。地主には耕作地が3町残され、残りは国が買い取り農民に売却した。農地改革は小作人の数を減らし自作農を2倍に増やした。富裕な農民は顕著に財産をふやした。高い土地代のため多くの下流、中流階級の農民は土地を所有することはできなかった。」

基本的にどの資本主義国についても批判的に書かれている。しかしアメリカを絡めた批判が多いことが特徴的である。

「日本の民主化と非軍備化に関する連合国列強の決定にも関わらず、アメリカの占領政権は独占企業と地主と強く結びついた反動的な代表者からなる政権を形成した。その後、彼らは統治の指導者となり、現在は独占企業に支援を受けた自由民主党として政権を握っている。アメリカの支援のもと政府は以前の国家機構を維持し左翼を罰し労働運動を抑圧した。政府は政治力によって日本の独占企業の地位の復興を促し国内のアメリカの影響の案内人となった。」

「サンフランシスコ会議の後、自由民主党は陸海空軍設置に着手した。これは明らかに憲法に反している。(中略)アメリカ帝国主義は日本を軍備化することを選んだのである。」

今の日本の歴史の教科書や、参考として読んだ今のロシアの歴史の教科書とは、だいぶ趣きが異なるのは確かではある。しかし、かといってこの教科書に書かれていることが嘘八百だとは思わない。普通の教科書では切り捨てられがちな弱者に焦点を当てている点は特筆すべきであろう。ただ自国の政治、経済が腐っていることを棚に上げて批判している点は問題があるが‥。

(文:文科三類二年 濱中)

コメントは受け付けていません。