中央アジア散歩 2011年夏学期 全学自由研究ゼミナール

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中央アジア・ウズベキスタンの伝統音楽・楽器

公開日:2011年8月28日

投稿者:uzstudent2011s

中央アジア…というと、独特の音楽、きらびやかな衣装、というのが個人的な印象である。そこで、ウズベキスタンの人々の民俗、生活を知る端緒として、中央アジア、ウズベキスタンの民族音楽、楽器について調べた。

▼中央アジアの民衆音楽、楽器

中央アジアの伝統音楽は、各民族の十九世紀までの生活形態によって大別することができる。遊牧民(カザフ人や、クルグス人)の音楽と東西トルキスタンの定住農耕民の音楽である。中央アジアでは、これらの伝統音楽を民衆音楽(ロシア語:narodnaia muzyka)と呼ぶことが多い。

遊牧民の音楽はシンプルな弦楽器による独奏や弾き語りである。(例外として、トルクメンは弦楽器と弓奏楽器の小合奏が一般的である。)現在では、主な弦楽器は民族ごとに規格化されているが、元来は多様な地方様式を持っていた。そのため、中央アジア各国に伝わる代表的な弦楽器は似通った特徴を持っている。また、住居を移動させる遊牧民にとって、軽くて移動に便利なものが好まれたため、弦楽器に限らず、民族楽器には軽くて持ち運びやすいという共通点がある。中央アジアの民族楽器は、現代の楽器の原型となるものが多くあるが、古くから東西アジアの交流の中継地となっていたため、これら民族楽器の特徴は一部の東西アジアの伝統楽器にも伺える。たとえば、日本の「琵琶」は、外見だけでなく、弦の仕組みも中央アジアの弦楽器と似ているそうだ。

かつて、文字を待たない遊牧民は、弦楽器の独奏・引き語りによって、口承文芸を後世に伝えていた。カザフ、クルグスには、キュイという器楽独奏のジャンルがあり、各キュイには付随する伝説が伝わっている。かつての演奏者はキュイの演奏に先立って伝説を聴衆に語ったそうである。(歴史や習俗、信仰、世界観などが凝縮されている口承文芸は、人々にとって娯楽であるとともに、自らのアイデンティティを強める重要な存在であった。しかし、現在では、各国に数十から数百の語り手が活躍するばかりになっている。)

定住農耕民の音楽の代表的なものは、マカームという形式の音楽である。これは、マカームという一定の旋法とリズム型に基づいて演奏される組曲で、西アジア全域にも共通して伝わる。マカーム音楽にも地方様式があり、現在にはブハラ、、ホラズム、フェルガナのマカームが伝えられている。固定的な要素と即興的な要素を併せ持つのが特徴的である。マカームで用いられる楽器は非常に豊富で、独奏と斉奏を重視する。

▼ウズベキスタンの民衆音楽、楽器

ウズベキスタンのお祭り、割礼、結婚式などお祝い事には、伝統音楽と、そして舞踏がつきものである。演奏に用いられる代表的な楽器は、スルナイという管楽器、タンブール、ギジャクなどの弦鳴楽器、ドイラという打楽器、ナイという横笛である。

スルナイ:杏の木やクワの木から作られる。吹き方、形ともオーボエに非常に良く似ている。

タンブール:洋ナシ型あるいは半球型のリュート属撥弦楽器

ギジャク:四本の弦を、弓を用いて演奏する捺弦楽器

ドイラ:タンバリンに似ている。ドイラと歌のみで女性が踊る伝統舞踊の形式がさまざまにある。

ナイ:竹製や木製の横笛。音は尺八に似ている。

ウズベキスタンの民族舞踏は、何度も高速で回転する胡旋舞である。胡旋舞は女性の踊りで、誘惑の踊りであると共に自然や刺繍の様子などを表した踊りである。それぞれの動きには意味があり、肩を上下に動かしたり、首や手の動き、体の反りなどで表現する。

ホルズム・ブハラ・フェルガナ地方の踊りが有名である。

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先日、フィールドワークの一環として、ゼミ生と都内の某イラン料理店へウズベキスタン料理を体験に行った。幸運にも、ダンスショーが行われる日で、中央アジアの伝統舞踏も体験することができた。胡旋舞と知っていたし、ネット上の動画で見たこともあったので、どんなものだろう、と軽い気持ちで期待していたが、実物は想像以上に躍動的で魅惑的な踊りであった。とにかく回る回る回る回る、、、それに、速い。私は思わず、お稽古の苦労を想像してしまった。(踊り子はおそらくすべて日本人であった。)首、腰、腕、手先の動きは、とても斬新で、神秘的に見えた。踊り子たちは始終笑顔を絶やさなかったため、どこか妖艶な雰囲気さえ感じた。途中、お客さんがドイラと思われる楽器で拍子をとり、それにあわせて踊り子が上体を反り返らせる、という踊りもあった。クライマックスには、踊り子の誘導でわたしたちゼミ生やほかのお客さんも踊りに参加した。踊り子の見よう見まねでリズムにあわせて踊っていると、私を含めみんなが楽しそうで、店内が一体化しているような心地がした。こんな結婚式やお祝い事は格別にすばらしいに違いない、と思えて、ウズベキスタンに行くのが楽しみになった。おそらく、本場の舞踏はさらに迫力があって、メッセージ性も高いのだろう。ウズベキスタンの伝統舞踏を目に焼き付けて(できるなら、すこしでも体にしみこませて)きたい。

文責:文科二類一年 藤沢

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