2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

中沢賢治(7月8日)

中沢賢治
Kenji Nakazawa

欧州復興開発銀行(EBRD)ロンドン本部銀行局
中小企業支援チーム企業成長プログラム(EGP)シニア・マネージャー

1956年新潟県長岡市生まれ。1979年東京大学法学部卒業。1979年東京電力(株)入社。埼玉支店営業課契約担当, 本店燃料計画課主任, 燃料購買課主任。1988年ペンシルベニア大学行政学修士課程修了。1989年外務省国際機関アソシエート・エキスパート資格取得。1991年より国際連合工業開発機関(UNIDO)ウィーン本部環境調整課に勤務。1992年国連環境開発会議(地球サミット、リオデジャネイロ)UNIDO事務局メンバー。1993年に欧州復興開発銀行(EBRD)入行。電力・エネルギー事業チームでプリンシパル・バンカーとしてコーカサス・中央アジア諸国で水力発電所、送電線プロジェクトなどのチーム・リーダー。1999年よりウズベキスタン事務所長、2003年のEBRDタシケント総会の準備を担当。2004年よりマケドニア、コソヴォ事務所長(兼務)。2007年よりキルギス事務所長。2010年キルギス危機対応の国際機関合同経済アセスメント事務局メンバー。2011年東京駐在シニア・バンカー。同年12月よりロンドン本部銀行局中小企業支援チーム企業成長プログラム(EGP)シニア・マネージャー。

講演要旨

 今回の講義では、欧州復興開発銀行(EBRD)の中沢賢治先生にご講演いただきました。
 まず講演の前半では、EBRDの紹介をしてくださいました。EBRDの発足は1991年で、このような国際金融機関としては最も新しいといいます。そしてその目的は冷戦終結直後の旧東側諸国の市場経済化支援のためでした。しかし近年では、「アラブの春」後の中東、北アフリカ諸国の支援も行うようになっています。当初、旧東側諸国に限定されていた支援対象地域が拡大した背景には、この地域がEU諸国と密接な関係にあるというだけでなく、政治体制変換後の支援経験が必要とされたこともあったといいます。
 これらのお話を、歴史的背景、各国間の政治、そして実際の制度運用など具体的なエピソードを交えて詳しくご説明いただきました。
 講演の後半では、中沢先生のこれまでのキャリアについてお話を伺いました。先生は大学卒業後に東京電力に入社されますが、この時にはまだ何を本当にやりたいのかについて、自覚的ではなかったといいます。そしてそれは社内の留学制度に応募したときも同様で、留学する意味について十分には分かってはいなかったと振り返っていました。
 しかしこの留学が、その後のキャリにおいて不可欠な技術を身につける、重要な時期だったといいます。特に重要だったのが行政学の授業だったそうです。その授業では、市役所の行政報告書などを読んだ上で、自分で問題を見つけ出し、政策提言をする課題が出されたそうです。そして、学生は自分の考えた政策を授業で発表し議論したというのです。
 先生は、この授業で学んだことが国際機関に入って一番役に立ったと仰いました。国際機関における仕事でも、自分で重要な問題を設定した上で、それに対する自分なりの回答を提示して、相手を説得しなくてはいけないからです。「海のような情報」の中で自分の立場を決めて、そこから情報を発信する能力がないと、国際機関では生き残れないといいます。
 また、国際機関で働きたい学生に対していくつかの現実的なアドバイスもくださいました。まず、いずれかのタイミングで実学の修士号は必要だと仰います。またその際には、国際機関で使われる方法論を学ぶためにも、留学することを勧めてくださいました。日本だけでの経験で国際機関の仕事に関わると、苦労することも多いようです。また、国際機関に入るためには学歴も重要だといいます。そのため、国際機関で評価されやすい学位を持っている方がいいようです。また学業成績も重要になるため、学生時代にきちんと勉強するようアドバイスをくださいました。更に、人的なコクネクションの重要性を強調された上で、そのような人間関係を学生時代に作っておくことが将来的に役に立つと仰っていました。
 講演の最後に、国際機関で働くことの一番の魅力として、国際機関は所属した段階で専門家として認められるということを挙げてくださいました。そして、専門家として働けるからこそ色々な面白い場所に行け、面白い人との巡り合いがあるというのです。国連でのキャリアに迷いが生まれた時期もあったそうですが、それでも続けてきたのはこのような御経験があったからだったといいます。
 質疑応答でキャリア形成における運について尋ねられると、先生は「ピンチはチャンス」といい、それらは交互に来ると仰いました。しかし、ピンチの時に次のチャンスが来るまで待てるかどうかが重要ですが、このように次の運を待ち続けることは容易ではありません。そのため、ラッキーであることも一つの能力であるとお答え下さいました。

講義の様子

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「ピンチとチャンスは必ず周期的に来るが、ピンチのときに潰れてはいけない。ラッキーが来るまで待てるのも一つの能力」と仰っていました。
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「国際機関で働く一番の魅力は、所属した時点で専門家とみなされ、いろいろな人に巡り合うチャンスが多いこと」仕事の魅力を語られる中沢さん。