2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

梅澤高明(5月7日)

梅澤高明

Takaaki Umezawa

A.T.カーニー
日本代表/グローバル取締役会メンバー

 東京大学法学部卒、マサチューセッツ工科大学経営大学院修士(MBA)。日産自動車を経てA.T. カーニーのニューヨーク・オフィスに入社。4年間に亘り米国企業の経営改革や戦略立案に携わる。東京オフィス異動後は、消費財、ハイテク、メディア、エネルギー、総合商社などのクライアントを支援。特に、グローバル戦略、グループ経営・ポートフォリオ戦略、組織・ガバナンス改革に豊富なプロジェクト経験を持つ。

 グロービス経営大学院客員教授。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム講師、ISLファカルティ、神戸大学非常勤講師。フジテレビ「新報道2001」、テレビ東京「モーニング・サテライト」などの報道番組にコメンテーター出演。著作に『ストレッチ・カンパニー』(翻訳、東洋経済新報社)、『グループ経営戦略と管理』(共著、企業研究会)。

 経済産業省「産業構造ビジョン2010」策定支援(文化産業立国、インフラ輸出)。同「クール・ジャパン官民有識者会議」「クリエイティブ産業国際展開懇談会」委員。

講演要旨

 梅澤さんは,経営コンサルティング会社であるA. T. カーニー社の日本代表を務められています。経営コンサルタントから見た世界と日本の現状を,実例や具体的数値を用いて分かりやすく説明してくださいました。
 現在梅澤さんは,1.中長期の戦略マネジメント,2.政府・政党への働きかけ,3.クールジャパンの推進,4.メディアでの議論,5.教育機関での活動,といった5つの領域でご活躍されています。
 熱心に音楽活動に取り組んだ学生時代を経て,日産自動車で9年間ご活躍なさいます。その後,31歳でマサチューセッツ工科大学へ留学されます。20代では旅行を除いて国外に出たことがなかったことから,英語での生活に苦労なさったそうです。言語の壁がある中で,自分の得意分野を確立させることが重要であったといいます。アグレッシブな議論を展開するクラスメイトの中に割って入っていく度胸は,その後にも活かされているそうです。
 MBA取得後,ニューヨークに残り, A. T. カーニー社へ就職されます。プロジェクトマネージャーとしてグローバルな相手と渡り合う中,90年代末の日本が経済危機に見舞われていく様子をご覧になります。そのような背景から,“日本社会にインパクトを与えたい”という意志を持ち,帰国されます。
 グローバル競争とは,“世界が平らなひとつの競技場になった”ことだと説かれます。ここでは,強いプレーヤーにシェアが偏る寡占が問題となります。実際に世界で日本がどのような位置にあるのか,どう評価されているのかを,客観的な指標を用いて説明してくださいます。日本がかつて誇っていた自動車や電気産業だけでなく,他の産業をのばさなければならない現状であることが理解できます。しかし,実際の日本産業は伸び悩んでいる状態であることも合わせて示されます。では今後どうして行くか,という問題に話が進みます。
 梅澤さんも関わる経済産業省の経済戦略は5つの分野から成っています。その中で特に梅澤さんが推進されているのが,クールジャパンです。これは,サブカルチャーや食といった日本の文化を世界に広めていく活動です。ここで,成功事例としてフランスを取り上げ,国のブランドを世界に広めていくことから生まれる経済効果を説明してくださいます。
 また,学生に対しては“リスクを取らないことが最大のリスク”とメッセージを送り,“何があってもどんな環境でも生き残れる”能力を身に付ける具体的方法を教えてくださいました。
 質疑応答では,企業と国の関係,講演・議論を成功させる秘訣,次世代の産業,教育とリーダーシップ,といった多岐に渡る質問にご回答くださいました。
 梅澤さんのご講演の特徴は,一貫して客観的な分析が行われていることです。事実から見出される課題と対策を示してくださるので,誰もが実感を持ってお話を伺えたことでしょう。

講義の様子

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コンサルタントとして、日本が世界の中で胸を張っていけるようにしたいという思いを語られる梅澤さん。

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「自分の視野を広げることで結果的に問題意識が生まれる」と、グローバル競争の中で生き残るための鍵を語られていました。