2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

金子恭規(6月24日)

金子恭規

Yasunori Kaneko

Managing Director, Skyline Ventures

 Yasunori Kaneko is managing director of Skyline Ventures, which was founded in 1997. Skyline Ventures is a venture capital firm that specializes in investing in product-focused healthcare companies.
 Dr. Kaneko has been involved in managing and financing U.S. life sciences companies since 1981. He began his career at Genentech, where he spearheaded its business development activities for the first several years. He was then project leader for the launch of Protropin® (human growth hormone), the first product marketed by Genentech.
 In 1987, he became head of corporate finance in the investment banking division of Paribas Capital Markets LTD in Tokyo, where he helped finance Japanese government agencies, municipalities and corporations in the Euro market. He also helped numerous life sciences companies raise capital. In 1991, he then became senior vice president and CFO of Isis Pharmaceuticals in San Diego, which went public during his tenure. In 1992, Dr. Kaneko was recruited to be the original business executive at Tularik Inc., where at various times he was CFO and vice president of business development until its public offering in 1999. At Tularik, he led a series of financings and negotiations of a number of corporate partnerships. Tularik was acquired by Amgen in 2004.
 He earned a medical degree from Keio University School of Medicine in Tokyo in 1978, and an MBA from the Stanford Graduate School of Business in 1981.
 Dr. Kaneko served on the advisory board of Freeman Spogli Institute for International Studies as well as on the advisory council of Graduate School of Business at Stanford University. He also served as a member of the board of trustees of Lick-Wilmerding High School in San Francisco. He is currently on the board of directors of Miraca Holdings listed in Tokyo Stock Exchange.

 Born and raised in Hiroshima, Japan, Dr. Kaneko and his wife, Yumi live in Hillsborough, California. They have two children, Tetsuya and Erika.

講演要旨

 本講義では、ジェネンテック創業時の立役者であり、スカイライン・ベンチャーズの設立者である金子恭規先生にお話を伺いました。バイオテクノロジーの第一人者たちとの思い出を話される金子先生の姿からは、世界の第一線で活躍されてきたキャリアを感じ取ることができました。
 金子先生のご出身は広島県で、中高一貫の広島学院から慶応大学医学部に入学されました。なぜ医学部に入学したのかという質問に対しては、お兄さんの影響だったとお答えの上で、当時は自分のやりたいことを決めることができなかったと振り返っていました。そして、医学部在籍時にキャリアに迷うようになり、旅行で印象に残っていたカリフォルニアに行く決心をなさったということでした。そしてスタンフォード大学に入られたのです。
 スタンフォード大学でMBAを取得後、先生はバイオベンチャーであるジェネンテック社へ入社されました。その際には、ジェネンテック社の社長に手紙を書いて実際に会い、社長もその場で先生を採用したというのです。当時の社長とは、ジェネンテック設立者で、大腸菌でインシュリンや成長ホルモンをつくるなどの遺伝子組み換え技術の基礎を確立した、ハーバート・ボイヤー氏でした。当時まだ小さかったジェネンテック社を先生が選ばれた理由は、左脳ではなく右脳を使う創造的な仕事をしたかったからということでした。そしてこの会社に入る決定は、これまで先生がなさってきた二つの良い決定のうちの一つだったといいます。
 ジェネンテック時代から現在に至るまでのお話の中で、先生は古い友人たちと映っている写真を何枚か紹介されました。その中には、アップル社の現会長であるアーサー・レビンソン氏など、バイオテクノロジーの第一人者たちが一緒に写っていました。当時そのような科学者たちはまだ若く、会社も小さかったにもかかわらず様々は発見ができたのは、会社が彼らに適切なモチベーションを与えたからだといいます。そしてメディカル分野で世界を変えるような大きな発見が次々となされる中で、先生も夢のある薬を持って世界中を飛び回っていたと、当時の仕事を説明してくださいました。
 講演の最後には、このような経験をともにした仲間たちとの現在の交流について紹介され、小さい会社を仲間と作り上げることが自分にとって一番楽しかったと振り返っていました。その理由はやはり、先生が情熱を傾けられるものを見つけたからではないでしょうか。
 先生はジェネンテック社に入られたときの話の際に、これまでご自身が聞いて印象に残っている講演がいくつかあると話されました。そして、そのような講演にご自身が歩まれてきた道に影響を与えてきたというのです。そのように紹介された講演者に共通しているのは、創業者であり、プレゼンテーションが上手いのはもちろん、冗談やいたずら好きで人を引き付ける魅力があるところだと思います。先生御自身も講演中、自分を能天気だと紹介したり、ホンダの創業者である本田宗一郎氏の考え方にロマンを感じると熱弁したり、人の心をつかむ力のある方だと感じました。
 講義後半の質疑応答で先生は、私たちが今後のキャリアにおいて意思決定をする際のアドバイスを下さいました。それは、使命感や世間の固定観念に縛られることなく、自分が本当に情熱を傾けられるかを自分自身に問うことでした。
 そして、日本のバイオベンチャーの状況について質問された際には、現在では良い研究者同士は大学や国を越えて共同している上に、良い研究というのは、世界中で同じ内容の研究が同時に行われていると説明されました。日本にこだわる必要ないということは、私たち大学生にもいえることではないでしょうか。

(担当:理科二類2年 足立奈緒子) 

講義の様子

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「”自分はダメ”と思っていては、上手くいかない」時には勘違いすることも重要だと語られる金子さん。
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自らの半生を振り返りながら、ターニングポイントでの選択の大事さを伝えられていました。