2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

Naomi Pollock(6月10日)

Naomi Pollock
Naomi Pollock

Architect and Journalist

 A graduate of the Harvard Graduate School of Design and Tokyo University, Naomi Pollock is an American architect who lives in Tokyo where she writes about design in Japan. Her work has appeared in numerous publications on both sides of the Pacific, including A+U, Dwell, The New York Times, Wallpaper* and Architectural Record for whom she is the Special International Correspondent. In addition, she is the author of Modern Japanese House and Hitoshi Abe, published by Phaidon Press Inc. in 2005 and 2008 respectively. Pollock is also the co-author of New Architecture in Japan published by Merrell Publishers Limited in 2010. Her latest book, Made in Japan: 100 New Products, was published by Merrell in 2012.

講演要旨

 今回の講義では、建築家で著述家でもあるナオミ・ポロック先生にご講演いただきました。
 先生が建築に興味を持ったのはまだ小さかったころだといいます。そしてその関心は続き、ハーヴァード大学で建築を専攻されました。大学卒業後はニューヨークのデザイン会社に勤めていましたが、ご主人の仕事の関係で日本に来られたそうです。そのため、来日前には日本に関する知識もあまりなかったようですが、友人からの勧めもあり、改めて東京大学の大学院で日本建築の勉強をすることにされたといいます。
 当時の先生には、日本の建築はとても変わって見えたため、「日本の建物はなぜこのような形をしているのか」を理解したかったといいます。そして、現代の建物を理解するためには古いものから理解する必要があるという考えから、日本の古民家(farmhouse)を研究し、学位論文としてまとめました。
 また学位論文の執筆と並行して、先生は日本の現代建築を見る様々な見学会に積極的に参加されており、この時期に新旧両方の日本建築について学んだといいます。そしてそのようにして得た知識を基に、日本建築に関する文章を欧米の雑誌で発表するようになっていきました。
 これまで主に日本建築に関する本を書かれてきた先生の近著Made in Japanは、日本の製品に焦点を当てています。この題材を思いついたのは、日本の製品は国外でもとても人気が高いにもかかわらず、そこで得られる情報が極めて少なかったからだといいます。先生は著書で取り上げた製品をいくつも紹介しながら、日本のモノづくりの特徴を説明してくださいました。そして、それぞれの製品がどのようにできており、そのアイディアがどこから来たのかといったお話をする中で、それらのモノが持つ本当の意味はデザイナーとの会話を通して理解することができたと仰いました。そしてタイトルMade in Japanの由来として、この言葉が単に「日本製」という以上に、日本のモノづくりの高い質をも意味するからと説明してくださいました。
 質疑応答では、多くの質問が出て活発な議論がなされました。例えば、日本製品の特徴を聞かれた先生は、日本のデザインは目で見るだけではなく、手で触って、実際に使った時のことを考えて作られているという興味深い説明をしてくださいました。
 また先生は、日本の建築や製品は細部のデザインが素晴らしいので、日常風景の細部を注意して見て欲しいと強調されていました。先生御自身が大学院で研究していた際に、建物の細部を見ることによって初めて日本建築の美しさを理解できたといいます。
 私たちの今後のキャリア形成に向けたアドバイスを尋ねると、まず、「クリエイティヴであること」と仰いました。そして、先生は自分にとって正しいと思ったことをしてきたといい、本当に興味があることをやるために、時にはリスクをとることになるかもしれないとも仰います。
 先生は日本に来て勉強する機会がなければ、現在している仕事はしていなかっただろうと御自身の転機を振り返っていました。そして、現在はこれまでになかったような多くのチャンスが存在しているといいます。その上で、教育は広い視野で考えることを促すとその重要性を改めて強調し、大学で学ぶ機会を活かしてほしいと仰いました。
 最後に、チャンスは重要かという質問に対して、ポロック先生は次の言葉で答えてくれました。「チャンスは備えあるところに訪れる(chance favors the prepared mind)」

講義の様子

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「目を開けてキャンパスを歩けば、そこには素敵な世界が広がっている」意識して日常を送ることの重要性を説くNaomi Pollockさん。
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身の回りにあるデザインについて、実例を示しながら学生と一緒に考えました。