2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

2012根本かおる(4月16日)

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Nemoto, Kaoru

人道問題コミュニケーター
国連UNHCR協会 理事
元UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)民間資金調達副部長

写真提供 (c)Takenao Anzawa

 

兵庫県神戸市出身。幼少期をドイツですごす。東京大学法学部卒。テレビ朝日アナウンサー、報道局記者勤務を経て、フルブライト奨学生として米国コロンビア大学大学院に留学し、国際関係論修士号取得。留学中にネパールの難民キャンプでインターンシップをした経験から転職。1996年から2011年末までUNHCR職員。トルコ、ブルンジ、コソボ、ネパールなどの難民援助の最前線で支援活動にあたるとともに、ジュネーブ本部で政策立案、および民間部門からの活動資金の調達をになう。2007年6月から2年半、国連UNHCR協会事務局長として、世界の難民への支援を呼びかける活動にあたる。日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2007」受賞、小学館「プレシャス」とMax Mara共催「第4回キャリアファッション・アワード」受賞。

2012年4月4日にNHK「視点・論点『”幸せの国”ブータン もうひとつの顔』」出演。

「難民パワーを日本も見習え:ここに国際化の『現場』がある」『AERA』2012年6月4日号, 42-44ページ。

初の単著『ブータンー「幸福な国」の不都合な真実』(予価:税別1500円)が2012年9月に河出書房新社より刊行される。

    2011年末、「国民総幸福」という言葉で日本中の心を摑んだブータン。しかし、国民の97%が幸せだと言われるこの小国は、実は難民という大きな問題を抱えている。ブータン難民キャンプで所長を務めた著者が、その問題の起源とこれまでの流れを膨大なデータと歴史、国際情勢をふまえながら解説。さらに、20年に及ぶ難民たちの悲劇と未だ解決していない現状を自身の体験をもとに紹介する。キャンプでのエピソードや心の交流を交えながら、彼らの真の姿を明らかにしていく一冊。

難民について子どもたちに伝える本も執筆中(この秋、学研教育出版より刊行予定)。

 

 

講演要旨

本講義の内容は、(1)世界の難民支援活動を仕事にしたわけ、(2)難民たちから学ばせてもらったこと、(3)地球規模課題に対して、私たちにできること、という三つの部分から構成されていた。根本先生自身の経験を軸に、「世界を舞台に仕事をするには」といった点にも言及し、活発な質疑応答を触発した。
根本先生は民放在職中に米国へ留学したが、その間にUNHCRのインターンとしてネパールの難民キャンプに行ったことが、「一生の仕事」に出会うきっかけとなった。そこで元政府高官であった難民女性が、難民キャンプで子供の教育支援や女性の権利の推進に取り組んでいる姿を見て、魂を揺さぶられたのである。そしてUNHCRに入ることを決めたのだという。
実際の難民支援は危険と背中合わせの活動であり、紛争下にあるソマリアの例でみられるように、治安の悪化に伴ってUNHCRの職員が国外退去せざる得ない時もある。このような状況でソマリアの人々の4人に1人以上(150万人)が国内避難生活を強いられており、これに国外へ避難している人も含めると合計240万人ほどが故郷を追われている。さらに飢饉なども重なりソマリア南部では3人に1人の子供が栄養失調という状況である。
しかし難民の人たちは、この厳しい状況でも自らの力で生きたいと望み、よく働きよく学ぶという。このような人々の姿勢から、支援活動をしている自分が逆に学ぶということは多く、それらは以下の六点にまとめられる。すなわち、(1)人間の業や喜怒哀楽、生き抜くことにもっとも生々しく触れること、(2)「日本」についてより深く知ること、(3)本当に大切なものとは何かを理解すること、(4)「何とかなる」との開き直ること、(5)「あきらめない」姿勢、そして最後に強調されていた、(6)ふるさとのかけがえのなさである。
このような難民に対して日本の人々も様々な支援活動を行っている。例えば、タレントによる寄付や宣伝のほか、アパレル企業による衣服の提供と難民の企業でのインターン受け入れな、そしてミュージシャンによる難民キャンプでの音楽活動を通した支援が行われている。また、支援活動の現場は外国の難民キャンプだけではない。日本国内にいる難民に対する支援の在り方として例えば、難民をスタッフとして積極的に雇用しているネイルサロンや、複数の大学による難民へ高等教育の機会を提供する共同のプログラムが挙げられる。さらに、難民に対する直接の支援だけでなく、インターカレッジの学生組織による勉強会、難民との交流会、スタディー・ツアーや、UNHCRによる映画祭など、より理解を広げるための催しも開催されている。
そして私たちにできることとして最後に、「寄付は、世界の課題に一票を投じるもの」であり、「あなたの100円で、世界を変えられる!」とのメッセージで講義を締めくくった。

講義の様子

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UNHCRの仕事として難民の人達を支援する過程で、自分自身が彼らから多くのことを学ばせてもらったとお話しを始めました。
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学生からも、難民支援に関わる問題や国際機関で働くために必要な技術等、多くの質問が出され、講義終了後も活発な議論が続けられていました。