理想の教育棟・ZEBLOG

東京大学駒場キャンパス・理想の教育棟のZEB(Zero Energy Building)広報チームの活動レポートです。

磯部先生 復習記事

公開日:2011年12月14日

投稿者:fukui

先日、磯部先生が話してくださった「東京大学のサステイナビリティキャンパス化への取り組み」の内容を大まかに復習したいと思います。

TSCPの意義

地球には膨大なエネルギーが放射エネルギーとしてもたらされているので、将来的には太陽からのエネルギーをすべて太陽光発電や風力発電によって取り出してさらには現在はゴミとして捨てているものから資源を取り出すことが可能になるかもしれません。
ただし、このような社会になるのはもっとずっと先の未来の話で、それまではエネルギー消費をできるだけ減らしながら可能ならばエネルギーを作り出していくことが重要です。

そのような経緯から小宮山前総長が強いイニシアティブを発揮して発足し、磯部先生が室長を務めていらっしゃるTSCP(東京大学サスティナブルキャンパスプロジェクト室)は以下のような意義を持っています。

  • 世界共通の重要課題である環境問題、特に地球温暖化問題への取り組み
  • 将来の社会モデルを先導し、社会への情報発信をするという大学の社会的責任
  • 将来の社会のリーダーシップをとる次世代の人材への教育効果
  • 省エネルギー消費によるキャンパスのランニングコストの削減

そのためにTSCPは低炭素キャンパスづくりを最重要課題として、TCSP2012とTSCP2030という二つの期間のアクションプランを設定しました。
(この内容については予習記事の方を参照してください。)
また、この目標とは別に東京都環境確保条例によって2002~2007年度の連続する3ヶ年の平均値を基準として、第一計画期間(2010年度~2014年度)に基準年度比で平均8%削減、第二計画期間(2015年度~2019年度)に基準年度比で平均17%削減が義務づけられています。

アクションプラン・都環境確保条例達成のために

TSCPでは東京都環境確保条例を排出枠購入によらずに削減を達成することを目標としています。
対策を早期に実施する方が、東京都環境確保条例が求める平均の削減量に寄与が大きくなることから、TSCPではソフト面での対策を初期段階で徹底するとともに、各部局からTSCP促進費として光熱水費用の一部を上乗せ徴収して、各局のハード面でのエネルギー消費量削減対策に対する初期費用の一部に充当する仕組みを作ってハード面の対策の前倒しを促進しました。

ハード面の対策は実施する前にその有効性を検討する必要がありますが、大学においては異なる部屋であっても照明系は照明系でまとめるなどして配線が複雑になっているので、実際にそれぞれの部屋や機器がどの程度のエネルギーを消費しているのかを把握するのはとても困難です。
そのため、季節や時間帯に寄るエネルギー消費量の差からそれぞれの用途における消費量を推測することになります。大まかに言えば実験系3割、空調3割、照明2割、その他2割のエネルギーを消費しています。
このため全体の7割を占める非実験系での削減方法は一般にも応用可能ということができます。

上で述べたような計測の難しさをふまえてTSCPでは主に2つの異なるアプローチでハード面の対策を行っています。

1つは主に大型の機器を含む、多くのエネルギーを消費するシステムに対して短期計測でエネルギーの消費量をモニターして、より最適なシステムを構築して運用改善するという方法です。
もともと2台の熱源設備で運用していたシステムに対して、新館を設置したことに伴って1台増加で設置していたのですが、短期計測の結果2台の熱源設備を用いて熱を旧館と新館の間で融通させれば十分ということが分かり、最適化した結果冷房期間で約70tonのCO2の削減に成功した大型熱源設備の運用改善がこの方法を用いた例としてあげられます。

もう1つは台数が多いものなど、短期計測が困難なものに対して、ベンチマークを設定する方法です。
この方法は例えば個別の部屋の熱源設備(つまりエアコンなど)に対して適用されています。
一般にエアコンは定格能力に近い負荷で運用するほど成績係数が上昇する傾向があるので、部屋の広さに対して定格能力が大きすぎるエアコンはエネルギーをより多く消費してしまいがちです。
このため全ての部屋の熱源設備の実態調査を行って、その結果に基づいて床面積あたりの機器容量原単位に対して上限を設定し、高効率機器への更新による効率向上分をさらに増加させるようにしました。

以上のようなハード面の対策の他に、全部局から教職員を1名ずつTSCP-officerとして選任して意識啓発活動の推進役としたり、全建物に共通して対策可能な空調の設定温度や共用部分の照明の間引きなどを依頼したり、意識啓発用のポスターのアイデアを学生に募集したりなどといったソフト面での対策も進めています。

以上のようなソフト、ハードの対策等の結果、TCSP2012の目標である、非実験系のCO2排出量15%削減は達成される見込みだということです。

情報発信

また、TSCPでは社会や学生への情報発信として、TSCP室のウェブサイトを作ったり、グローバルサスティナビリティの重要性をテーマとした情報発信拠点としてNetwork of Networksを構築したり、あまり知られていない排出権取引に参加することで知名度を高める、といった活動も行っています。


磯部先生は今後の取り組みの展望についても具体的に、その障壁なども含めてお話しくださいました。
個人的には、ハード面の対策をする前に実態調査や短期計測をするということが実は大変ということが予習のときには見えなかった部分で大変興味深いと思いました。
磯部先生本当にありがとうございました。

(文責:青木)

磯部先生予習記事

公開日:2011年12月6日

投稿者:komcee2011

今回講演していただく磯部雅彦先生は、TSCP(東大サステイナブルキャンパスプロジェクト室)室長として、大学の省エネルギー化に取り組んでおられます。

講演に先立ち、TSCPとは何なのか、どのような活動をしているのかについてまとめました。

TSCPってなんだ

TSCP(東大サステイナブルキャンパスプロジェクト)とは、2008年に発足した全学的なプロジェクトであり、温室効果ガス排出削減による低炭素キャンパスづくりを当面の最優先課題とし、低炭素キャンパスづくりに取り組んでいる。

3つのコンセプト

・エネルギー需給に関する自律分散協調(見える化)
・省エネルギー・創エネルギーによる低炭素化
・持続型社会建設に向けた社会連携

を効果的かつ効率的に同時進行する“共進化システム”を構築し,大学という研究・教育機関のモデルケースとして先導的に実現することを目指している。

また、それに加え国内外の大学間のネットワークを通じてこれらの試みを世界的な大学の動きにつなげていくと共に、その動きを社会へと波及させていく。さらに社会における低炭素型の技術と対策の普及をリードすることによって、低炭素社会実現に向けて経済的な波及効果をもたらすことをめざしている。

TSCPアクションプラン

TSCPでは低炭素キャンパスに向けた具体的な目標としてアクションプランを作成している。

TSCP-2012(2008〜2012年度末)

2006年度に比べ2012年度には非実験系の二酸化炭素排出量の15%削減を目標にしている。二酸化炭素以下の1〜4を通じて排出削減を行う。

  1. 電力計設置(見える化)による教育・研究活動の増加にともなう排出量増分の抑制
  2. 省エネ機器への更新支援
    • 投資回収年数が機器更新年数の半分以下のもの
    • 年間CO2削減量と初期投資額との比が大きいもの
    • 回収年数が4年を超える分は,初期投資の補助も考える
    • 大型熱源系の省エネ化により約6%削減(初期投資額合計約5億円)
    • 照明・個別空調・冷蔵庫などの更新により約7%削減(初期投資額合計約26億円)
  3. 大量調達による省エネ機器導入普及モデルの作成
  4. 初期投資が回収でき,その後は光熱水費が削減できるその他対策も含め実施

既に、各種機器の導入量や各建物のエネルギー消費動向の調査が行われており、そこから得られたデータをもとに優先順位の高い場所から機器更新や運用改善が行われている。



TSCP-2030(2012〜2030年度末)

TSCP2030では、2006年度に比べ二酸化炭素排出量の50%削減を目標とし、2012年までにその具体案を検討する。現段階では、TSCP2012の期間中においては、対象とならなかった機器を含め、機器劣化更新時を捉えた高効率化、コストを含めて実用段階になかった技術の導入、更に創エネルギー(太陽光発電など)を本格化させていくとしている。

参考

(文責:福井)

12月8日(第8週)磯部雅彦先生紹介

公開日:2011年9月26日

投稿者:sakaguchi


磯部雅彦 Isobe, Masahiko

TSCP室長
東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻教授

地球の持続性を確保するためには、省エネルギーが不可欠です。
本講義では、大学における省エネルギーの試みを幅広く紹介します。

1975年 東京大学工学部土木工学科卒
1981年 工学博士(東京大学)
1983年 横浜国立大学工学部土木工学科助教授
1992年 東京大学工学部土木工学科教授
1999年 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻教授
2006年から東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻教授として現在に至る
2009年4月から2011年3月まで副学長

専門分野
海岸工学、沿岸域環境
著書
海岸環境工学(東大出版、共著)、海岸波動(土木学会、共著)、海岸の環境創造(朝倉書店、編著)等
主な社会活動等
日本沿岸域学会理事・会長、土木学会理事・副会長等を歴任。
現在、内閣府総合海洋政策本部参与、中央防災会議専門調査会委員、社会資本整備審議会・交通政策審議会交通体系分科会計画部会委員、交通政策審議会港湾分科会防災部会委員、海岸における津波対策検討委員会委員長等。

参考資料