理想の教育棟・ZEBLOG

東京大学駒場キャンパス・理想の教育棟のZEB(Zero Energy Building)広報チームの活動レポートです。

高見氏講演 復習-1

公開日:2011年11月19日

投稿者:komcee2011

先日の高見さんの講演内容について、大まかにまとめたいと思います。

高見さんは現在文部科学省にいらっしゃいますが、元々建築学専攻でした。
大きな転向のきっかけについて高見さんは、博物館や公民館を設計するワークショップで、そのワークショップの意向に反して街全体の設計をしてしまったことを挙げました。

与えられた敷地をはみ出して設計することは建築家の仕事ではない。それでは建築の枠を超えて未来を設計する仕事を、ということで、文科省への入省を考えるようになったのだとか。

入省後10年に渡って、学校・教育に関わる分野に携わってきた高見さんは、現在エコスクールや学校施設の耐震化に関わっていらっしゃいます。

講演の前半では、近年の学校施設を取り巻く現状と、学校施設をエコスクール化するメリットについて述べられました。

  • 全国各地にあり、面積も公共施設全体の約4割を占める。
    →その分エネルギー消費を抑えることは大きな効果がある。
  • 第二次ベビーブームの時代に建てられ、老朽化した施設が多い。
    →改修・建替えはどのみち必要であり、環境に配慮した改修でCO2の排出量削減ができる。
  • 次世代を担う子供たちが学び、活動する場である。
    →学校施設を教材として用いることで環境教育になる。
  • 社会の中で最も身近な公共施設である。
    →省エネ効果の見える化で、環境意識を地域に普及させられる。
  • 震災などの非常時には避難所として使われることが多い。
    →停電のときにも太陽光発電や太陽熱設備が使えるなど、有効に活用できる。

そして後半には、エコスクール事業の課題と、具体的にはどのようにエコ化を進めていくかが述べられました。
エコスクール事業の課題は、厳しい財政状況の中、どのように耐震工事との折り合いをつけてエコ化を進めていくかというものです。エコ化が防災としての側面を持っているとはいえ、耐震性のない学校がまだ20,000校以上もある現状は深刻であり、決まっている予算をどのように使っていくかという問題になると、エコ化にそれほど予算をつぎこめないということです。

具体的な進め方について、まず国と学校側の役割が述べられました。
公立学校と国立学校(国立大学法人など)では、国との関わり方が異なります。

公立学校の場合は、国が定めた制度の枠組みや全国的な基準に基づいて、都道府県または市町村が運営をします。国は都道府県と市町村に財政支援や指導・助言もしています。

これに対して国立学校は、公立学校に比べて学校側の自由度が高く、予算についても民間資金などが入るため融通が利きやすいのが特徴です。

エコ化に話を戻すと、国はエコ化について、

  • 基本的な考え方や推進方策の検討、提示
  • 財政政策の実施
  • モデル事業・実証事業の実施
  • パンフレットや事例集の作成・配布
  • 整備効果測定ツールの開発

を行っています。エコスクールの基本的な考え方については、予習で詳しく書いたので割愛します。

また、大学や自治体は、先に述べたように運営に自由度が高く予算や技術も使いやすいので、

  • 計画的な整備推進
  • スケールメリットを生かした取組み
  • 民間資金を活用した取組み
  • 先端的な取組み

が求められており、実際に多くの取組みの例が挙げられました。

ここからは私の個人的な感想になりますが、国のできることは枠組みを作ることに限られてしまうということを実感しました。国の考えをしっかりと共有して理解し、それぞれの立場からアプローチしていくことが必要だと感じました。

高見さん、本当にありがとうございました。

(文責:野崎)

高見氏講演復習-3

公開日:2011年11月8日

投稿者:komcee2011

講演終了後、KOMCEEのカフェテリアKOMOREBIにて、高見さんと関心の高い学生との間で懇親会が行われました。その際にお聞きした内容をまとめます。

小・中学校と大学とではエコへのアプローチの仕方に違いがあるべき

エコへの取り組み方という点で、大学には小・中学校などとは違った役割を期待している、と高見さんは言われていました。

小・中学校では照明はこまめに消す、太陽光をできるだけとりいれる、暖房の設定温度を下げるなど比較的身近で、私たちが思い浮かべる日常的なエコ活動が中心になりますが、大学は少なくとも各県に1つずつその地域を代表する国立大学があり、研究設備が整っているのだから、周囲に1つのモデルとして示すためにも先進的なエコ活動を行い、社会のエコをリードしてほしいということです。

その例として、外壁のほとんどが太陽光パネルで埋め尽くされた東工大のゼロ・エミッション・ビル、エネルギー環境イノベーション棟があがりました。外壁を太陽光パネルで埋め尽くすというのは、効率的に本当にいいのかは少し疑問ではありますが、敷地ギリギリの東急大井町線と目黒線の交点にあるため、電車内から見る何気なく見る人にも大きな印象を与えることは間違いありません。

防災の意識の風化

防災の意識というのは今のような震災直後の時期は高いですが、いつ起きるか、また本当に起こるかさえ分からない災害への意識を保ち続けるのは難しく、たいてい2, 3年で風化していってしまいます。

実際に阪神大震災後にとられた対策設備費も、だんだん防災意識が低下して予算が厳しい中で削られていってしまうということが少なくなかったようです。限られた予算の中で、差し迫った問題と起こるかもしれない災害のどちらにお金をかけるかというのは難しい問題で、結局今持っているような問題意識を持ち続けないと、今回の震災の経験を生かした長期的防災政策は困難だということです。

防災の担当

学校の防災、というものを考えたときそれは文部科学省の担当するものなのでしょうか。あるいは国土交通省の担当という考えもあるかもしれません。

実際にその線引きは曖昧で難しく、困っているところだそうです。どちらかだけで進めていくというわけにもいかないわけで、しかし両方別々にやっていくとどこかで重複する部分がでてきて、その無駄が「仕分け」られてしまう危惧もあり、各省ともなかなか思い通りに進めるのは難しいということになるそうです。

海外のZEB的な取り組み

外国のエコ活動の進み具合はどうなのか、という話になったとき、東工大ではないですがこれまた太陽光パネルをふんだんに使用したドイツのゼロエネビル・ソーラーファブリック社が話題になりました。

調べてみたところこの会社は現在環境先進国であるドイツの国内の太陽光パネルのシェアの20%を占めていて、工場はやはり太陽光発電と菜種油で100%ゼロ・エミッションを実現しているということです。また、お隣の韓国では学校のZEB化計画が国の方針として進められているという話もありました。このようにEU諸国・米・豪・韓など環境対策先進国ではZEB化というのは当然のように進められていることのようです。

本当にいろいろな方向の話を高見さんから聞くことができた、有意義な懇親会だったと思います。高見さんわざわざお越しいただき本当にありがとうございました。

(文責:藤縄)

高見氏講演 予習-2(どうして学校でエコが必要なの?)

公開日:2011年10月19日

投稿者:野崎

いきなり 「エコな学校作りましょう!!」と言われても、なかなかみなさん納得できないのではないでしょうか。今回は何故学校という施設でエコが志向されねばならないのか、説明したいと思います。

まず前提として、これからは省エネ志向が本格的に重要視される時代になっていくであろうということを考えていただきたいです。

福島での事故以後心配され続ける電力不足、原子力発電所の安全性、そして巨大地震のリスク、みなさんがあの地震で実感された通り、エネルギー不足というのは案外身近な存在なのです。さらに現在、地球規模で、CO2の大量排出が原因と推定される温暖化が進行しています。これに対して京都議定書が発効されました。 この中で日本は約6%のCO2削減を義務付けられています。経済面でも CO2排出権の取引市場は膨張を続けています。省エネに努めることが自身の生活の保全、直接の金銭的利益につながる時代が来つつあるのです。

次に、学校という施設が膨大なエネルギーを消費している場であるということをご説明しましょう。

文部科学省が発表しているデータによると、学校はあらゆる業種、施設の中でも非常にエネルギー消費の多い場であるということです。今年は夏場にエネルギー不足が予測されたことに対し、文部科学省は各学校施設に節電を呼びかける文書を送付しました。東京大学もその例にもれず、図書館ではクーラーの温度設定が変わり、一部エレベータの停止や、大多数の自動販売機の稼働停止が行われました。

また環境教育の重要性が認知されてきており、鹿児島県の総合教育センターなどがその重要性を認める文書を出しています。「環境についていろいろ教わったけど、それを教えてくれた学校それ自体が環境に対して全く配慮しない姿勢をとっている」では生徒に示しがつきませんよね?身をもって実例を示してやる必要性があるのです。

さて、これらの事実から導きだされる 最初の問いへの答えを示しましょう。

「これから省エネルギー、及びエコが重要となる時代が来る。その時代の中で、膨大なエネルギーが消費される場であり、かつ環境教育において重要な役割を担う学校は、エコ化によってエネルギー消費を抑えるとともに、教育の実例となる必要があるから。(115字)」

これだけ抑えていれば、次回の講演会では満点をとれること請け合いです。 みなさんも、今回の講演に足を運んで、実際に学校施設のエコ化を進める方からお話を聞いてみませんか?

(文責:齋藤)

参考資料

Asahi.com CO2が経済回す 排出権取引、膨らむ市場

http://www.asahi.com/special/070110/TKY200802060288.html

文部科学省

http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/07053109/005.pdf
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/011/gaiyou/__icsFiles/afieldfile/2011/08/26/1310220_1_1.pdf
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1306602.htm

鹿児島県総合教育センター

http://www.edu.pref.kagoshima.jp/infomation/others/kankyou/pdf/zyuyousei.pdf

高見氏講演 予習-3(google先生に聞いてみた)

公開日:2011年10月18日

投稿者:野崎

高見氏の講演テーマである「学校施設のエコ化」について、インターネット上で調べて出てきた情報を簡単にまとめました。

エコスクールとは?

まず、google検索で「学校施設 エコ」を調べてみたところ、「エコスクール」という言葉が出てきました。
エコスクールとは言葉の通り環境に配慮した学校施設や、環境に配慮した活動に取り組む学校などを指します。

そして、エコスクールを全国に浸透させるために文科省・農水省・経産省および環境省が連携して行っているのが、「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進に関するパイロットモデル事業」です。

先駆的な取り組みを行う公立学校に対して国庫補助を行うことで、施設整備を進め、同時に環境教育を推進することを目指しています。平成9年から現在までに、計1000校以上の学校がエコスクールに認定されています。

エコスクール整備のポイントは以下の3つです。

施設面・・・やさしく造る

  • 学習空間、生活空間として健康で快適である。
  • 周辺環境と調和している。
  • 環境への負荷を低減させる設計・建設とする。

運営面・・・賢く・永く使う

  • 耐久性やフレキシビリティに配慮する。
  • 自然エネルギーを有効活用する。
  • 無駄なく、効率よく使う。

教育面・・・学習に資する

  • 環境教育にも活用する。

【出典】文部科学省HP「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進」

エコ大学ランキングとは?

続いて、「大学 エコ」でググってみると、「エコ大学ランキング」という耳慣れない言葉が現れました。
これは、2008年に結成されたCCC(Campus Climate Challenge )実行委員会による、全国の大学へのアンケート調査から作成されたランキングです。

CCC実行委員会というのは、エコ・リーグ(全国青年環境連盟)を中心に大学の環境改善活動に関心のある複数の大学の環境サークル・環境ゼミ等のグループが母体となって結成されたかなり若い団体です。
第3 回目の調査となる本年度は、全国大学環境対策一斉調査として全国約750校全てを対象に温暖化・省エネ対策実施状況を調査しています。(調査票はHPで見る事ができます)
大学内で行われている対策の情報を社会に発信し、大学間で共有することを目的としているようです。

(ちなみに、昨年の第2回調査の結果を見てみると、東京大学は調査票に回答していないのかランキングに参加していないことになっていました。第3回調査の締め切りは過ぎていますが、これも回答していない可能性が高そうです。そもそもそれに答える担当者とは誰なのかが不明であり、謎は深まります。)

【出典】エコ大学ランキングHP

このように、「学校施設のエコ化」は、少し調べただけでも上から・下からの取組みが見えてきます。
木曜日の講演では、実際に学校のエコ化に取り組む高見氏からどのようなお話が聞けるのか、非常に楽しみですね!

(文責:野崎)

高見氏講演・予習-1(学校の災害対策)

公開日:2011年10月18日

投稿者:野崎

学校施設の「エコ化」とは少しズレるかもしれませんが、今回は現在学校施設に関して無視できない重要な問題になっている、災害に向けた安全性の確保について文科省の資料を簡単にまとめました。

今年に起きた東日本大震災において耐震化されていない学校施設では構造体に大きな被害が発生しました。
ちなみに公立小中学校の非耐震化率は約27%(22年4月の時点で)、国立大学の保有施設の約38%が耐震性に問題を抱えているということです。

今回の地震による揺れは、ほとんどの地域では想定しうる最大のレベルに達しておらず、今後同じ程度の被害で収まるとは限らないため、施設の耐震化は急務と言えます。
また今回は、柱、梁、壁、床等の構造設計の主な対象の構造体の損傷が軽い場合でも、それら以外の天井材、内・外装材、照明器具、設備機器、窓ガラスなどの、いわゆる非構造部材の被害が多数発生しています。

天井高の高い屋内運動場において天井材や照明器具が落下すれば構造体には問題がなくとも大惨事となるおそれがあります。そしてそこは震災後に避難場所として活用することもできなくなってしまうのです。
災では非構造部材の損傷による生徒の事故が報告されており、その耐震化の重要性が再認識され、個々の設備のための具体的な点検・対策の方法が検討・実施されています。

今回の震災で壊滅的な被害をもたらした津波への対策については、

  • 津波が到達しない安全な高台での建設
  • またそのような安全な場所への避難経路の整備
  • 屋上の緊急的避難場所としての整備
  • 上層階が安全で緊急的な避難場所となるよう建物を高層化

などが考えられています。高層化については他の公共施設との複合化も視野にいれ、もちろんより構造面に配慮して考えられているということです。

ところで今、複合化という言葉を出しましたが、今回の震災では地域における学校の重要性が再認識され、学校施設にそもそも教育機能だけでなく、避難場所として十分な諸機能を備えておくという考えが必要になってきました。

そこで地域拠点としての学校を活用するため、例えば地域防災の司令塔機能を備える複合避難施設として、学校と官署や社会教育施設等を集約した複合施設や、バリアフリーや医療・介護機能を備えた災害弱者用避難エリアとして、学校と公園や福祉施設等を整備したものなど、様々な計画・設計のアイデアが練られています。
このように学校施設に関する安全性の議論は、単なる施設それ自体の防災機能の強化だけでなく、学校という空間の概念の拡張にまでわたっています。

20日の講演では学校施設について、「エコ化」とともに、こうして今変わりつつある安全性の確保に関する話も高見氏にうかがえればと思います。

(文責:藤縄)

 

「理想の教育棟」から学校のエコ化を考える~高見英樹氏講演告知!~

公開日:2011年10月13日

投稿者:野崎

「理想の教育棟」から学校のエコ化を考える
以下の内容で、高見英樹氏の講演を行います。
ゼミ生ではない皆さんも、ぜひ積極的にご参加ください。

講師:文部科学省大臣官房文教施設企画部 施設助成課課長補佐
高見 英樹 氏

題目:日本の学校施設のエコ化について

身近な公共施設である学校のエコ化は、社会に環境意識を浸透させる、環境教育の場の整備という意味でも重要です。今回は、文科省で学校施設のエコスクール化を担当する高見英樹氏が様々な取組みや今後の展望を語ります。

日時:10月20日(木) 5限(16:20~17:50)

場所:21 KOMCEE  K303 (理想の教育棟3F)


10月20日(第3週)高見英樹 氏October 20, 2011 Talk by Hideki Takami

公開日:2011年9月27日

投稿者:sakaguchi

高見英樹 Takami, Hideki

文部科学省大臣官房文教施設企画部
施設助成課課長補佐

学校は公共施設の中でも大きな割合を占める身近な施設であるとともに、次世代を担う子どもたちの学習・生活の場でもあることから、そのエコ化を全国的に進めることにより、広く社会への波及効果が期待できます。本講義では、小・中・高等学校や大学などの学校施設のエコ化をどのように進めていくかについて、国や地方公共団体、大学等の取組を紹介しながら、皆様と議論をしたいと考えています。

2002年に入省後、学校安全や耐震化、教科書検定・採択、国立大学施設の中長期計画の策定などの業務に携わる。2011年4月より現職で、学校施設のエコスクール化などを担当。
一級建築士。

参考資料

参考サイト

高見氏が育児休業の経験をつづった、読売新聞ウェブでの連載記事です。

Mr. Hideki Takami, who belongs to the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, is a member of the Eco-School Program. Eco-School means an ecological school which has some facilities suitable for environmental sustainability and commits ecological activity. In short, he is concerned with making policies to spread Eco-School.

The concept of Eco-School is made up of three important factors. The first is to build facilities which are friendly for both users and the environment. The second is to keep each facility available over the long term by utilizing natural energy technologies and so forth. The last factor is to make use of itself for the environmental education. By the way, why is Eco-School so important? There are three reasons.

Firstly, it is effective for decreasing CO2 emissions from schools. They consume much energy among public facilities. Second, it is important for spreading the environment-friendly idea. Schools are not only places for pupils to study but also familiar facilities to local people, so schools have a big influence on their attitudes. Lastly, it can lead to a disaster measures. Schools are regularly assigned as emergency evacuation centers. Thus, natural energy, which could be used on occasional blackouts, is important.

However, the budget for Eco-School Program is limited because of the severe financial condition these days and that limitation is a large obstacle to the project.

(Report by Saito)