理想の教育棟・ZEBLOG

東京大学駒場キャンパス・理想の教育棟のZEB(Zero Energy Building)広報チームの活動レポートです。

大岡先生講演 予習-1

公開日:2011年11月30日

投稿者:sakaguchi

今回講演していただく大岡龍三先生は21 KOMCEE建設にあたり“地下水地下熱を利用した冷暖房システムの構築”を担当されました。

そこで今回はそのシステムついてと、具体的に21 KOMCEEにおいてどのようなシステムが生かされているかをまとめました。

前提として、外気の温度とは違い、地中の温度は一年を通じてほぼ一定(16~17℃)です。つまり、夏は外気に比べて低温、冬は外気に比べて高温となっています。その熱を地中熱ヒートポンプ利用して空調に利用することで、外気の熱を利用するよりも高効率となり、省エネが期待できます。また冷房時の廃熱を空気中に放出せずに、地下に放出するため、ヒートアイランド現象の緩和も期待されます。

地下水循環型冷暖房システムについて


地下水の温度は地中の温度と同じとなるため、地下水を汲み上げて熱を吸収することで、間接的に地中の熱を汲み上げることができます。これを空調に利用することで、空調に使われるエネルギーの削減が期待されています。

しかし、やはり地下水のみで建物の空調を管理することができない部分もあり、また地下水をくみ上げる際の井戸の目詰まりも問題となります。

21KOMCEEでは大岡先生の研究を活用し、空冷と水冷のバランスをとり、熱源の約40%を地下水からくみ上げるという応式をとっています。また目詰まりを防ぐために、目詰まりが生じた場合地下水をくみ上げる井戸と、それを地中に戻す井戸の役割を入れ替えるシステムによって、目詰まりの発生による空調の非効率化を防いでいます。

建物基礎杭を利用した地中熱空調システム

地下水には揚水量の規制があるため、地下水を利用せずとも地中の熱を汲み上げることのできるシステムが必要となってきます。地中に埋設したチューブ内に水を循環させ、この循環水を介して地中から熱を吸収するという「建物基礎杭を利用した地中熱空調システム」もこのシステムの一つです。

しかし、チューブを埋設するためには掘削のコストが必要になり、さらには認識不足などの理由が、システム普及の妨げとなっています。

21 KOMCEEでは建物を支えるために設置する基礎杭にチューブを打ち込み熱交換器として活用するという方式を採用しているため、掘削の費用を削減することが可能です。このシステムは東京大学柏キャンパスや、なんとあの東京スカイツリーでも採用されています。

以上のようなシステムが21KOMCEEでは活用され、ZEB達成をめざしています。

(文責:佐藤、藤本)

大岡先生講演 予習-2

公開日:2011年11月30日

投稿者:sakaguchi

その他のZEBの取り組み

経済産業省の報告書では、ZEB達成のための取組として、以下が挙げられています。

設計時のZEB(関連する省エネ法の規制:建築物に係る措置)
  • 要素技術
    ―設計に依存するもの(躯体(床や壁、梁など建物の構造を支える骨組のこと)に関連するパッシブ建築など): 躯体の断熱、日射遮蔽、自然光の照明利用、外気を活用した空調、空調搬送方式など
    ―機器に依存するもの: 空調熱源、照明、空調搬送機器、OA機器、太陽光発電など
  • 外部とのネットワーク: エネルギーの面的利用、都市の未利用エネルギー(河川熱、ごみの下水などの都市排熱等)の活用など
  • これらの総合設計(パッケージ化)と統合制御(システム導入)
運用時のZEB(関連する省エネ法の規制:工場・事業に係る措置)
  • 天候や利用人数なども踏まえたPDCAを回しながらの運用改善(チューニング、コミッショニング)
  • エコオフィスやワークスタイルの見直し、働き人の意識改革
  • テナントとオーナーの取組
  •  など

いくつか分かりにくい言葉があるので解説しておきます。

パッシブ建築とは、特別な動力機器を使わず、建築設計の工夫によって太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを利用して、暖房や冷房(室内気候調節)を行おうとするものです。
つまり、新しい技術だけでなく、建築のデザインによっても、エネルギー効率を上げることが出来るということで、例えば太陽光を電力源としてではなく、暖房効果や、光源として、直接取り込むというものです(ダイレクトゲイン)。

エネルギーの面的利用とは、日本に多くみられる狭い土地の中高層ビルの場合、ビル単独でゼロ化することは困難なので、ビル外部のエネルギーを活用することで削減効果を高めようとするものです。
具体例としては、地域冷暖房によるエネルギー施設の集約や、地域冷暖房のネットワーク化が挙げられます。地域冷暖房とは、駅やビル、商業施設、マンションなど地域内の建物に対し、まとめて冷暖房や給湯を行うシステムで、そのコアとなるのが、未利用エネルギーの使用です。地下熱、河川熱、海水の熱といった自然のものから、ビルの排熱、地下鉄の排熱など、人工的なものまで、今まで使われずに消えてきたエネルギーを利用することで効率をあげようというものです。

運用時のZEBについてですが、こちらは理想の教育棟でも重要視されています。窓の開け閉めを効率的に行うことを促すシステムが、これに当たります。理想の教育棟では、室内と外の気温、湿度を測り、窓を開けるべきか、閉めるべきかを自動で判断し、部屋の中で表示します。そうすることで、冷暖房の利用を最小限に抑えることが出来ます。
また、その他にも、冷暖房をできるだけ使わないようにすることを奨励し、社内の評価システムの組み入れている起業もあり、ZEBへの取り組みと言えるでしょう。

以上のような取り組みを通して、一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなるような建築物、ZEBを作ることが目指されています。
その解決策は必ずしも最先端の技術ばかりではなく、建築デザインの工夫や、意識改革といったものも、大きな役割を果たしています。

参考URL

(文責:中村)

12月1日(第7週)大岡龍三先生紹介December 1, 2011 Talk by prof. Ryozo Ooka

公開日:2011年11月28日

投稿者:sakaguchi

大岡龍三 Ooka, Ryozo

東京大学生産技術研究所教授

大岡先生は、21 KOMCEEの地下水・地下熱を利用した冷暖房システム構築を担当されました。

略歴

京都大学 大学(工学部 建築学科) 1989 (卒業)
京都大学 修士(工学研究科) 1991 (修了)
東京大学 博士(工学系研究科 建築学)
博士(工学) 東京大学
1993-1998 東京大学生産技術研究所 助手
1998-2000 福井大学工学部 講師
2000-2001 福井大学工学部 助教授
2001-2006 東京大学生産技術研究所 助教授
2007-2009 東京大学生産技術研究所 准教授
2009.08-  東京大学生産技術研究所 教授

日本建築学会(サステナブルビルディング小委員会主査、ヒートアイランド小委員会幹事、都市気候モデリングWG主査、総合論文誌 第4号編集委員)空気調和・衛生工学会(国際関係委員会、大会実行委員会委員、学会賞技術審査委員、SHASE技術フェロー)日本風工学会、日本気象学会、エネルギー資源学会、日本流体力学会(2007年年会実行委員会幹事)、日本予防医学リスクマネージメント学会(理事)

研究テーマ
  • ヒートアイランドの解析と制御
  • 都市の大気汚染現象の解明と制御
  • 都市のエネルギー資源の最適システム設計
  • 自然エネルギーを利用した省エネルギー型空調システムの提案
  • 都市の火災延焼予測モデルの開発
参照サイト

Realizing Zero Energy Building by utilizing geothermal energy

The term “Zero Energy Building” is defined as “a building in which net energy consumption is nearly zero.” Recently, many developed countries have taken an action to realize ZEB that is expected to be helpful to solve environmental problems. In Japan, Prof. Ooka’s team studies various systems to achieve it.

What is most important in zero-energy buildings is to “control” the entire building. With sensors and operation systems, the amount of energy consumption is kept at minimum. In addition to the design of the building, changing attitudes of people towards the environment is also important to seek ZEB.

Prof. Ooka has participated in constructing the 21 KOMCEE where this seminar is held. This building was designed in an attempt to accomplish ZEB by 2030 and it has some experimental tricks and devices.

One of these devices is to utilize groundwater for air conditioning. It pumps up groundwater deep under the building and the water will efficiently cool down or warm the ceilings that will subsequently modulate ambient temperature through radiation. The Radiation air conditioning system heats not the air around humans but human body directly, thus it can save energy for fanning the air. Other than that, there are many systems to seek ZEB in this building. For example, movable louvers automatically following the sun’s movement help to use sunlight and warmth more efficiently.

(Report by Sato)

高見氏講演 復習-1

公開日:2011年11月19日

投稿者:komcee2011

先日の高見さんの講演内容について、大まかにまとめたいと思います。

高見さんは現在文部科学省にいらっしゃいますが、元々建築学専攻でした。
大きな転向のきっかけについて高見さんは、博物館や公民館を設計するワークショップで、そのワークショップの意向に反して街全体の設計をしてしまったことを挙げました。

与えられた敷地をはみ出して設計することは建築家の仕事ではない。それでは建築の枠を超えて未来を設計する仕事を、ということで、文科省への入省を考えるようになったのだとか。

入省後10年に渡って、学校・教育に関わる分野に携わってきた高見さんは、現在エコスクールや学校施設の耐震化に関わっていらっしゃいます。

講演の前半では、近年の学校施設を取り巻く現状と、学校施設をエコスクール化するメリットについて述べられました。

  • 全国各地にあり、面積も公共施設全体の約4割を占める。
    →その分エネルギー消費を抑えることは大きな効果がある。
  • 第二次ベビーブームの時代に建てられ、老朽化した施設が多い。
    →改修・建替えはどのみち必要であり、環境に配慮した改修でCO2の排出量削減ができる。
  • 次世代を担う子供たちが学び、活動する場である。
    →学校施設を教材として用いることで環境教育になる。
  • 社会の中で最も身近な公共施設である。
    →省エネ効果の見える化で、環境意識を地域に普及させられる。
  • 震災などの非常時には避難所として使われることが多い。
    →停電のときにも太陽光発電や太陽熱設備が使えるなど、有効に活用できる。

そして後半には、エコスクール事業の課題と、具体的にはどのようにエコ化を進めていくかが述べられました。
エコスクール事業の課題は、厳しい財政状況の中、どのように耐震工事との折り合いをつけてエコ化を進めていくかというものです。エコ化が防災としての側面を持っているとはいえ、耐震性のない学校がまだ20,000校以上もある現状は深刻であり、決まっている予算をどのように使っていくかという問題になると、エコ化にそれほど予算をつぎこめないということです。

具体的な進め方について、まず国と学校側の役割が述べられました。
公立学校と国立学校(国立大学法人など)では、国との関わり方が異なります。

公立学校の場合は、国が定めた制度の枠組みや全国的な基準に基づいて、都道府県または市町村が運営をします。国は都道府県と市町村に財政支援や指導・助言もしています。

これに対して国立学校は、公立学校に比べて学校側の自由度が高く、予算についても民間資金などが入るため融通が利きやすいのが特徴です。

エコ化に話を戻すと、国はエコ化について、

  • 基本的な考え方や推進方策の検討、提示
  • 財政政策の実施
  • モデル事業・実証事業の実施
  • パンフレットや事例集の作成・配布
  • 整備効果測定ツールの開発

を行っています。エコスクールの基本的な考え方については、予習で詳しく書いたので割愛します。

また、大学や自治体は、先に述べたように運営に自由度が高く予算や技術も使いやすいので、

  • 計画的な整備推進
  • スケールメリットを生かした取組み
  • 民間資金を活用した取組み
  • 先端的な取組み

が求められており、実際に多くの取組みの例が挙げられました。

ここからは私の個人的な感想になりますが、国のできることは枠組みを作ることに限られてしまうということを実感しました。国の考えをしっかりと共有して理解し、それぞれの立場からアプローチしていくことが必要だと感じました。

高見さん、本当にありがとうございました。

(文責:野崎)

田村氏講演 予習-2(環境設計)

公開日:2011年11月9日

投稿者:komcee2011

今回の講演者である田村氏が現代社会の課題として取り上げられている循環型社会への転換等に関わる「環境設計」について田村氏が現在ディレクターをつとめていらっしゃる類設計室の資料をもとに書いていこうと思います。

現在の建築にはデザイン性や住み心地だけではなく環境との調和、環境への影響削減、循環サイクル形成、自然エネルギーの利用や防災機能が求められています。そして、それらに関する専門技術(太陽光発電等)を統合し建築計画に反映させ、その計画を施工段階や現場の段階でもリードしていく仕事が環境設計であり、まだ比較的新しい分野ではありますが全建築の中で環境設計とその周辺分野の工事費に占める割合は40%、技術者数は20%といった統計が出ています。これからもわかるように現在の建築において環境設計の重要度はかなり高いと言えます。

そのような需要が出てきた背景には現代社会の様々な問題があります。現代社会では市場拡大や科学技術発展を追い求めてきた結果として、地球環境の破壊が続いています。そういった問題に対し、環境設計の行おうとしている最大のテーマは昔のような「循環型社会」への転換であり、それを進めていく上で主に以下の4つの理念があります。

  • 環境保護
  • 新たな場の形成
  • ビオトープといった人間の時代にふさわしい空間形成
  • 社会や地域に開かれた情報基盤の整備

これらの理念は例えば類設計室の次のようなプロジェクトに見ることができます。川崎市ゼロ・エミ工業団地計画では、建設時は現場の廃棄物をゼロにしたり、リサイクル資材などの利用を進め、稼働後は廃棄物・エネルギー・水の徹底的なリサイクルを行うことを計画しています。他にも琵琶湖環境科学研究センターでは開かれた研究をするための情報基盤の整備が行われ、越谷市中心核施設においては市民と共にビオトープなどの自然を再生する活動を行うようです。

参考

http://www.rui.ne.jp/architecture/projects.html

身近な例でいうと、これらの考えは21 KOMCEE(理想の教育棟)の設計コンセプトである「ゼロ・エネルギー・ビルディング」、「アクティブ・ラーニング」、「周辺環境との共存」とも一致しています。ゼミ当日(11月10日5限)には21KOMCEEの建設プロジェクトにおける思考と実現の軌跡といったこともお話下さるようですので、21KOMCEE建設にあたってどのように環境設計の考えが関わっていたのかについてなども詳しくうかがうことができるのではと思います。

最後に、「自然と調和した建築」をどうつくるか、「人間的な空間」とは何か?これらは環境設計の場で考えられている重要な問題です。そのため、講演でもおそらくこういったことも話題になるかと思うので、これらの問いに対する自分なりの答えを考えながら田村氏の講演を聞くと面白いと思います。

(文責:栗原)

田村氏講演 予習-1 (駒場キャンパスについて)

公開日:2011年11月9日

投稿者:komcee2011

建築はそれだけで存在するのではなく、常に周辺環境と共にあります。なので、一つの建築を考えるときには周辺環境との調和(あるいはコントラスト)やその土地の持つ歴史性や社会的との関係なども考えることになります。そこで、今回理想の教育棟の設計を担当した類設計室の田村正道さんをお迎えするにあたり、この記事ではその準備として理想の教育棟の周辺環境、すなわち東京大学駒場Ⅰキャンパスの他の建築物やキャンパス計画について見ていきたいと思います。

東京大学駒場Ⅰキャンパスのある場所にはもともと駒場農学校、そしてその後身にあたる東京帝国大学農学部がありました。1935年にその東京帝国大学農学部との敷地交換により旧制第一高等学校(一高)が移転してきて、1949年一高が東京大学(旧東京帝国大学)に吸収されるかたちで消滅したのに伴って東京大学教養学部のキャンパスとなりました。

農学部時代の建築物は第二次大戦による焼失とその後の取り壊しによって現在は残っていませんが、一高時代の建築物は1号館(1933年完成)、900番教室(1938年完成)、駒場博物館(1935年完成)、101号館(1935年完成)が残っています。これら4つの建築物のすべてが内田祥三という建築家による設計です。内田祥三は、東京帝国大学営繕課長や同大学総長、日本建築学会会長などを歴任した人物で、安田講堂、総合図書館、法文1、2号館、医学部本館、工学部1、2号館など関東大震災後の1920年代から30年代にかけて本郷キャンパスで建造された建築物の多くを設計しました。ゴシック様式に基づくその建築スタイルは内田ゴシックと呼ばれ、駒場キャンパスに残る彼の4つの建築物もそうした内田ゴシックの作品と言われています。

東京大学駒場地区キャンパス計画においては、1号館、その左右に向きあい対称をなすかたちで配置された900番教室と駒場博物館、そして101号館と正門などを歴史的空間、保存建造物としています。そして、それと並んで全体構成をなすものとして、銀杏並木を「重要な軸線」と呼んでいます。外部空間については、眺望景観を意識して高さを抑制し周囲の樹木と建築物との関係も重視するべきだとしています。

近年、駒場キャンパスでは旧来の図書館、駒場寮などが取り壊されて、駒場図書館(2002年完成)、アドミニストレーション棟(2003年完成)、コミュニケーションプラザ(2006年完成)といった建築物が新しく建設されるなどの再開発が進められていて、今回の理想の教育棟の建設もその流れの中に位置づけられるものとして考えられます。駒場図書館やコミュニケーションプラザなどは先述の内田ゴシックの建築物とは違ういわゆる現代建築の建築物ですが、キャンパス計画に基づいた、銀杏並木の軸線の延長という意識や高さの抑制というのは見てとれます。

以上のような周辺環境との関係から、最後に少しだけこの理想の教育棟を考えてみます。まず、キャンパス計画から考えてみると、1階部分で銀杏並木と直角に交差する軸線(キャンパス計画で副軸線とされているもの)を生かしており、また高さも抑制されていることがわかります。近い年代に建設された駒場図書館やコミュニケーションプラザの意匠との比較からは、外部からは軽やかさ、内部からは明るさを感じさせるようなガラスの効果的な使用、吹き抜けによる内部空間の開放感の演出などが共通項としてあげられます。また、理想の教育棟周辺の樹木の多くはキャンパス計画に基づいて保全されたもので、それらと理想の教育棟のファサードとの調和というのも意識されているかと思います。

このほかにも理想の教育棟周辺環境との関係から考えられることというのはまだまだたくさんあります。実際に設計を担当された類設計室の田村正道さんのお話の中からそうした周辺環境との調和についてどういった苦心があったのかということをうかがい、新たな気づきを得られればと思います。

参考URL

東京大学キャンパス概要 (http://www.u-tokyo.ac.jp/index/b07_j.html)

沿革 駒場キャンパスの歴史 (http://www.c.u-tokyo.ac.jp/history/02.html)

東京大学の建築物 – Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%BB%BA%E9%80%A0%E7%89%A9)

(文責:川名)

高見氏講演復習-3

公開日:2011年11月8日

投稿者:komcee2011

講演終了後、KOMCEEのカフェテリアKOMOREBIにて、高見さんと関心の高い学生との間で懇親会が行われました。その際にお聞きした内容をまとめます。

小・中学校と大学とではエコへのアプローチの仕方に違いがあるべき

エコへの取り組み方という点で、大学には小・中学校などとは違った役割を期待している、と高見さんは言われていました。

小・中学校では照明はこまめに消す、太陽光をできるだけとりいれる、暖房の設定温度を下げるなど比較的身近で、私たちが思い浮かべる日常的なエコ活動が中心になりますが、大学は少なくとも各県に1つずつその地域を代表する国立大学があり、研究設備が整っているのだから、周囲に1つのモデルとして示すためにも先進的なエコ活動を行い、社会のエコをリードしてほしいということです。

その例として、外壁のほとんどが太陽光パネルで埋め尽くされた東工大のゼロ・エミッション・ビル、エネルギー環境イノベーション棟があがりました。外壁を太陽光パネルで埋め尽くすというのは、効率的に本当にいいのかは少し疑問ではありますが、敷地ギリギリの東急大井町線と目黒線の交点にあるため、電車内から見る何気なく見る人にも大きな印象を与えることは間違いありません。

防災の意識の風化

防災の意識というのは今のような震災直後の時期は高いですが、いつ起きるか、また本当に起こるかさえ分からない災害への意識を保ち続けるのは難しく、たいてい2, 3年で風化していってしまいます。

実際に阪神大震災後にとられた対策設備費も、だんだん防災意識が低下して予算が厳しい中で削られていってしまうということが少なくなかったようです。限られた予算の中で、差し迫った問題と起こるかもしれない災害のどちらにお金をかけるかというのは難しい問題で、結局今持っているような問題意識を持ち続けないと、今回の震災の経験を生かした長期的防災政策は困難だということです。

防災の担当

学校の防災、というものを考えたときそれは文部科学省の担当するものなのでしょうか。あるいは国土交通省の担当という考えもあるかもしれません。

実際にその線引きは曖昧で難しく、困っているところだそうです。どちらかだけで進めていくというわけにもいかないわけで、しかし両方別々にやっていくとどこかで重複する部分がでてきて、その無駄が「仕分け」られてしまう危惧もあり、各省ともなかなか思い通りに進めるのは難しいということになるそうです。

海外のZEB的な取り組み

外国のエコ活動の進み具合はどうなのか、という話になったとき、東工大ではないですがこれまた太陽光パネルをふんだんに使用したドイツのゼロエネビル・ソーラーファブリック社が話題になりました。

調べてみたところこの会社は現在環境先進国であるドイツの国内の太陽光パネルのシェアの20%を占めていて、工場はやはり太陽光発電と菜種油で100%ゼロ・エミッションを実現しているということです。また、お隣の韓国では学校のZEB化計画が国の方針として進められているという話もありました。このようにEU諸国・米・豪・韓など環境対策先進国ではZEB化というのは当然のように進められていることのようです。

本当にいろいろな方向の話を高見さんから聞くことができた、有意義な懇親会だったと思います。高見さんわざわざお越しいただき本当にありがとうございました。

(文責:藤縄)