2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

松島由佳(4月28日)

松島由佳

松島由佳(まつしま・ゆか)

NPO法人クロスフィールズ 共同創業者・副代表

 

2008年3月東京大学経済学部卒業。在学中、カンボジアの児童買春問題の解決を目指すNPO法人かものはしプロジェクトのスタッフとして勤務し、現地視察型のプログラム開発などに従事。

卒業後はボストン・コンサルティング・グループに勤務し、主に通信業界・消費財業界の企業経営をコンサルタントとして支援。勤務の傍ら、プロボノ活動としてNPO法人TABLE FOR TWO Internationalの新規事業立ち上げにも従事。

2011年5月、NPOとビジネスの両方のバックグラウンドを活かし、共同創業者の小沼大地と共にクロスフィールズを創業。

講演要旨

今回の講演者は、NPO法人クロスフィールズ共同創業者である松島由香さんでした。年齢も私達と近いということで、親しみやすい話し方が印象的でした。

松島さんがクロスフィールズで進めているのが「留職」の普及です。留職とは、企業の人材が途上国のNPOで働き、本業のスキルを生かして現地の人々とともに社会問題の解決に挑むというもの。途上国のNPOにとっては事業の進展を図ることが、ボランティアとして働く日本人にとっては社会への貢献が、そして人材を送り出す側の企業にとっては市場の開拓が、それぞれ可能であり、3つのアクターすべてがメリットを得られる仕組みとなっています。
実際に挙げられた例では、インドネシアのNPOが生活習慣病予防を進め、派遣された医療機器メーカーの社員は自分の仕事の意義を実感し充実感を得、医療機器メーカーは体内データを測定する機械のマーケット拡大に成功したとのことでした。

松島さんはどのような経緯で現在の活動に至ったのでしょうか。
最初のきっかけは中学時代、家族でカンボジアを訪れた時でした。地雷原で遊ぶ子供たちを前にして、自分は何かしなければいけないのではと思ったそうです。NPOが運営する現地の病院で、使命感に燃えて働く人々に触発されたのもこの時だったといいます。
大学時代には、東大の先輩が作った、人身売買を防ぐための活動をするNPO「かものはしプロジェクト」に参加。きっかけさえあれば志は行動に変わるのだとおっしゃいました。
同時に、旅をしながら世界にアンテナを広げていったそうです。
NPOでの活動を通して、それを支えるビジネスの力を感じたことで、大学卒業後は外資系コンサルタント会社へ就職。平日は本業を、休日や仕事後の時間にはNPOで活動する日々でした。
企業で働く中で、初めのうちは会社を通じて社会貢献したいと思っていても、働くうちに情熱が冷めていく人が大多数であるということに気づきます。これはもったいないことだと思い、その情熱を生かす場を提供しようとの思いからクロスフィールズを立ち上げたのだそうです。初めのうちは非常に苦労されたそうですが、徐々に規模を拡大されています。現在は留職のマネジメントをしながら、自分たちの理想的な海外協力の形を実践していくことに喜びを感じていると話されました。

講演の終盤では活動を通した発見や私達へのメッセージを話されました。
アジアの途上国において、並外れた覚悟とハングリー精神を持つ人々の存在、物不足をチャンスに変える同時多発的なイノベーションの存在、当たり前のように国境を越えて生まれるつながりの存在に大きな学びを得たといいます。途上国とは援助の対象ではなく、学びを得る対象であり、協力する相手であるとおっしゃいました。
また、グローバルに仕事をするに必要な三要素を挙げてくださいました。それは
  1、 好奇心と自分の意志
  2、 尊敬の念をもって他人と信頼関係を築くこと
  3、 どこでも生きていけること
だそうです。
そしてまた、私達1,2年生へのメッセージも下さいました。
  1、 型にはまらず自分の頭で考えること
  2、 好きなことをやること
  3、 アンテナを広げることに時間を使うこと
最後の質疑応答の中で、クロスフィールズの共同創業者との出会いや企業に勤めていたころのTABLE FOR TWOへの参加のきっかけなどについての学生の質問に答えて、行動しているうちに次々と人や活動との出会いが生まれていったのだとお話なさいました。「いろいろなことをやってみるといいと思います。100個やって1つアタリがあればラッキーぐらいの感覚でいいと思います」という言葉がとくに強く印象に残っています。

(担当:文科二類1年 山下浩平) 

講義の様子

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