2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

江川雅子(6月20日)

Egawa, Masako

東京大学 理事

シティバンク東京支店勤務の後、ハーバード・ビジネス・スクールに留学。MBA 取得後、ソロモン・ブラザース本社入社、1988 年に東京支店に転勤。1993 年にS.G. ウォーバーグ証券会社(現、UBS 証券会社)に転職。2001 年より2009 年までハーバード・ビジネス・スクール日本リサーチ・センター長として日本企業の研究およびケース作成に携わる。2009 年4 月より現職。

専門はコーポレート・ガバナンス、ファイナンス。

主著、訳書は、『株主を重視しない経営』(日本経済新聞出版社、2008 年)、『日本企業再生の課題』(共著、千倉書房、2005 年)、『国境がなくなる金融・資本市場』(共著、日本経済新聞社、1982 年)、『ハーバードの女たち』(訳書、講談社、1987 年)、『メアリー・ケイの人を活かす23 章』(訳書、東洋経済新報社、1994 年)。

税制調査会委員、財政制度等審議会委員、経済財政諮問会議専門委員などを歴任。

東京大学教養学部教養学科国際関係論分科卒業、
ハーバード・ビジネス・スクール修士号(MBA)取得。
一橋大学商学研究科博士課程修了、商学博士。

講演要旨

 Global citizenの育成が世界の大学で主要な課題となっている中、東京大学でも東大憲章に見られるように、世界的視野を持った市民的エリートの育成を目指しており、そのために「行動シナリオ」を作成し、「タフな東大生」などのスローガンの下で実行に努めている。しかし、日本では依然として、法曹・ジャーナリズム・大学などの閉鎖性、高学歴人材の流出入の少なさ、対内直接投資の少なさといった問題が残っている。
 ところで、江川先生の経験によると、外資系企業には論理的思考・説得の重要性、職務の明文化、明確な権限や指揮命令系統、合理性・柔軟性、完ぺきに拘らずスピードも重視する、などの特徴がある。こうした外資系企業も含めて、グローバル企業で働くためには、自分のキャリアは自分で面倒をみる事、「本社勤務を目指す」などと目標を高く持つ事、単一のキャリアに拘らず転職も選択肢に入れた上で常に学習しスキルを磨く事が重要である。それだけでなく、グローバル企業も組織である以上、コミュニケーション力は不可欠であるし、その場における文化や暗黙のルールを尊重する事も求められる。
 こうした事を踏まえて、今後身につけていくべき能力として次のようなものが挙げられる。
・論理的思考
・異文化力(どこにいてもくつろげ、柔軟性を持ちながらも意見をしっかり発信できる力)
・強い個人(肩書ではなく個人としての考え方や信頼関係を含めた中身で勝負する力)
・コミュニケーション能力(英語力・インフォーマルなやり取りも重要)
・教養(リベラルアーツ・日本の歴史や文化に対する深い理解)
・Street smart(社会で色々な人と接し、多様な経験をする中で養われる対人能力・判断力・柔軟性など)
 そして、個人としての戦略としては
・自分の強みを生かす
・「自分探し」に拘らず、与えられた仕事に、何を学ぶかを考えつつ、チャレンジし楽しむ
・目標を持ち、柔軟に前向きに進んでいき、転んでもただでは起きない
という事を意識していくことが大切である。

(担当: 文科一類1年 山添慎一郎)

講義の様子

江川雅子講師講演様子
外国に出た際には、どこでもくつろげる能力として「異文化力」が重要だとお話しされました。これは、異文化にあっても柔軟性を発揮し、自分の意見を述べることができ、また前向き・積極的・楽観的になれること、ということでした。

江川雅子講師講演様子
グローバルに活躍するのに必要な能力の一つとして教養を挙げる江川講師。特に外国でよく聞かれる自国の歴史や文化については深い理解が必要とおっしゃっていました。