2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

新浪剛史(5月27日)

新浪 剛史Takeshi Niinami

株式会社ローソン 代表取締役 CEO
内閣官房 産業競争力会議 議員
公益社団法人 経済同友会 副代表幹事

生年月日
1959(昭和34)年1月30日

学歴
1979年~1980年 スタンフォード大学交換留学生
1981年3月 慶應義塾大学経済学部卒業
1991年6月 ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得)

職歴
1981年4月 三菱商事株式会社入社
砂糖部隊海外チーム(現・原糖ユニット)配属

1995年6月 株式会社ソデックスコーポレーション
(現・株式会社LEOC)代表取締役社長

1999年7月 三菱商事株式会社
生活産業流通企画部外食事業チームリーダー

2001年4月 同社コンシューマー事業本部
ローソン事業ユニットマネジャー
兼外食事業ユニットマネジャー

2002年3月 株式会社ローソン顧問

2002年5月 同社代表取締役社長執行役員

2005年3月 同社代表取締役社長 CEO

2006年4月 株式会社ACCESS社外取締役(現)

2010年6月 オリックス株式会社社外取締役(現)

2013年5月 株式会社ローソン代表取締役 CEO(現)

受賞歴
2005年 財団法人経済広報センター
第21回企業広報賞「企業広報経営者賞」受賞

2006年 社団法人日本メンズファッション協会
第35回「ベストドレッサー賞」受賞

2006年~2009年日本アナリスト協会
「コーポレートディスクロージャー優良企業賞」受賞

2009年 日本IR協議会 第14回「IR優良企業賞」受賞

公職
公益社団法人 経済同友会
2006年~09年 幹事
2005年 外交・安全保障委員会副委員長
2005年~06年 政官討論の会副委員長
2006年 市場主義・民間主導社会のあるべき姿を考える委員会副委員長
2007年 消費活性化委員会副委員長
2008年 政治委員会副委員長
2009年~11年 米州委員会委員長
2010年~ 副代表幹事(現)
2011年~農業改革委員会委員長(現)
2012年~東京オリンピック・パラリンピック招致推進PT委員長(現)

一般社団法人日本フランチャイズ・チェーン協会 常任理事 2011年~(現)

アジア・ビジネス・カウンシル(ABC) 2007年~ メンバー(現)

世界経済フォーラム(ダボス会議)
2009年~ インダストリー・パートナー
2009年~ グローバル・アジェンダ・カウンシルメンバー
2012年~ グローバル・アジェンダ・カウンシル Role of Business 議長(現)

内閣府 地域社会雇用創造事業「選定・評価・審査委員会」 座長 2010年~2012年

農林水産省食料・農業・農村政策審議会委員 2010 年~(現)

内閣府 新しい公共推進会議 委員 2010 年

経済産業省 産業構造審議会 新産業構造部会 委員 2011 年

内閣府 国家戦略会議 フロンティア分科会 「繁栄のフロンティア部会」 委員 2012 年

内閣官房 産業競争力会議 議員 2013年~(現)

講演要旨

 株式会社ローソン代表取締役社長である新浪剛史さんが「社会人になってから今まで何を考えてきたか」についてお話くださいました。90分間はつらつと語ってくださるご様子が印象的でした。
 講義の冒頭で、学生達に「海外に出たい人?」「国内でいたい人?」と問い掛け、半分強程度の学生が「海外に出たい」と反応しました。1981年に三菱商事に入社なさった当時は、新浪さんご自身も「海外に出たい」とお考えだったそうです。しかし、この質問は“81年の感覚”であり、“ナンセンス”だとも付け加えられます。その理由は、今後TPPの影響により、経済の国境が希薄化するためだ、とご指摘なさいます。TPPの流れで、英語のコミュニケーションがより必要になると同時に、“あなた何者?”という自分の国のアイデンティティが重要になると強く主張されます。
 三菱商事に入社直後に配属されたのは、砂糖の原料の輸入・加工に携わる部門であったそうです。そこは年間300億の損害を持つ部門であり、会社全体の利益でボーナスが決定するという当時の背景から、同期や先輩に「おまえのお陰でボーナスが悪い」と悪態をつかれたほどであったといいます。また、「君の出世はこれで終わったね」とも言われたそうで、つまり、入った部門で将来が分かるようなお決まりのコースが存在したといいます。それは、出世競争に成功の兆しがさした入社3年目においても同様で、他人によって決められた人生、を感じたといいます。そんな折に、留学生や大学教授、企業が参加する外部の勉強会に誘われ、そこでの出会いを通じて“自分で人生つくってるよなぁ”と強く刺激を受けたそうです。このことが発端となり、ビジネススクールへの進学を決められます。その後、度重なる社内選考や、ご自身単独での受験などを経て、ハーバード大学経営大学院へ留学されます。
 ハーバードでの最初の3ヵ月間は「みんなが何言っているのかすら分からない」状態であったそうです。必死な1年目、社会的活動にも参加した2年目を経て、“平均的によくできる、でも、何かに突出していない”という日本人の特性や“相手から見て自分がどう異なっているか、が売り”という、後の世界観につながる発見をされたそうです。
 その後、日本に戻り、ハーバードで得た知識をいかし、病院のヘルスケア食品の事業開発でご活躍なさいます。その中でさらに“実践に勝るものはない”という、留学時代からより発展した発見もされます。
 これらのご経験を通し、学生達に“早く自分で意思決定すること”“そのためにリスクを取ること”をエールとして送ってくださいました。
 続く質疑応答では、ご自身の他者との区別化を尋ねる質問に対し、“スピーディーな意思決定”を挙げられ、ローソンの社員のモチベーション向上に関する質問に“直接対話”とお答えくださいました。
最後に、日本人のアイデンティティを問う質問には、“相手を気遣うこと”とお答えになられました。

講義の様子

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「若い間であれば、リスクをとっても決して後悔はしない」と学生にエールを送られました。

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紆余曲折の海外経験をユーモアを交えて語る新浪さん。