2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

2012郡山幸雄(6月18日)

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Koriyama, Yukio

École Polytechnique Assistant Professor

1998年東京大学理学部数学科卒。2000年、エコール・ポリテクニーク卒、2002年、東京大学数理科学研究科修士修了。2008年、シカゴ大学経済学部博士号取得。高校生時に日本数学オリンピック入賞。シカゴ大学でロジャー・マイアーソン(2007年ノーベル賞)に師事。2008年よりエコール・ポリテクニーク助教授。ゲーム理論を使った多人数での意志決定行動の分析を専門とする。ピーター・フランクル氏を師匠として大道芸を趣味とし、これまで72カ国に旅行、38カ国で大道芸を披露した。

講演要旨

郡山先生は、東京大学理学部数学科を卒業後、エコール・ポリテクニーク、College des Ingernieurs(MBA取得)、東京大学数理科学研究科(修士号取得)を経て、経済学者になることを決意し、シカゴ大学に留学されました。そして博士号取得後、2008年よりエコール・ポリテクニークで助教授をなさっています。専門は、ゲーム理論を使った多人数での意志決定行動の分析です。また、ピーター・フランクル氏を師匠として大道芸を趣味とし、これまでに多くの国で大道芸を披露されてきました。
先生の講義はフランスの数学者コンドルセの話から始まりました。1785年に発表されたコンドルセの定理は決定の参加者nが無限に大きくなると正しい決定が下される確率は1に収束するというものです。この定理は、集団は民主的に物事を決めるとより良い決断ができるという含意を持つために民主主義を支持する数学的基礎となり、1789年のフランス革命にも影響を与えたものです。
戦術的な状況での集団的行動を分析する理論であるゲーム理論は今日に至るまでノーベル経済学賞受賞者が多く輩出されたことからわかるように、社会からの注目を浴び続けてきた分野です。先生は、陪審員は正直に投票する・情報を得るために各陪審員に費用はかからない・大人数の決定に費用はかからない、という強い仮定を置くコンドルセの定理について、初めの二つの仮定を緩めたとしても多数による決定の方が良い結果が出ることを示した、「コンドルセの定理の復活」という論文をお書きになっています。寡頭政治が適切である場合もあるが、民主主義の方が間違いが少ない、ということを示唆する内容です。
さらにこうした手法によりこうした社会全体の意志決定だけでなく、実社会には陪審員制度、裁判官制度、国民投票、議院制度、連邦政府、EUなど様々な制度が混在しており、そのひとつひとつについてどのような制度が妥当であるかということを検討することができます。そして先生は個人と社会の関係について、意志決定は誰の手でなされるべきか、個人は社会にどのような責任を持ち、社会は個人にどのような責任を持つのか、という言葉で総括されました。
このように専門の話をされたあと、海外留学で学んだこととして、新しいアイデアを取り入れることの大切さ、最適解はなくとも「おいしいとこどり」をすることが有効であるということを挙げられました。異なる価値観を知ることで自分を知り、納得できる進路を選べるようになったほか、先生の専門は数学と社会科学が交錯するという意味で「人間」の研究であるので、多様な視点を持つことができたことも役に立っているともおっしゃいました。
そして学問に向いている人にはnoblesse obligeがあり、社会的分業としてのエリートを担う責務があることを自覚し、多くの哲学を学ぶことで自分の意見を形成し、学問と人生を楽しみながら社会に対して独自の視点を提供する「真のエリート」たれ、とおっしゃいました。

(担当: 文科一類1年 高橋愛)

講義の様子

Koriyama1
学生へのメッセージとして、人生や学問を楽しみながらも、個人は社会に何ができるのか、また社会は個人に何ができるのかを考えてほしいと述べられました。
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フランス、米国へ留学した経験を踏まえて、現地で学ぶことの利点として、新しいアイディアを取り入れられこと、多様な視点を持てるようになること、良き師・良き友に出会えることを挙げていました。