2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

2012田瀬和夫(6月4日)

Contact Form Shortcode Error: Form 22 does not exist

Tase, Kazuo

在イスラマバード(パキスタン)国連広報センター所長代行

略歴

1967年福岡県生まれ。東京大学工学部卒、同経済学部中退、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員。2010年10月からは大阪大学国際公共政策研究科にて招聘教授。1991年度外務公務員I種試験合格、92年外務省に入省し、国連政策課(92年〜93年)、人権難民課(95年〜97年)、国際報道課(97年〜99年)、アフリカ二課(99年〜2000年)、国連行政課(2000年〜2001年)、国連日本政府代表部一等書記官を歴任。2001年より2年間は、緒方貞子氏の補佐官として「人間の安全保障委員会」事務局で勤務した。2004年9月より国際連合事務局・人道調整部・人間の安全保障ユニットに出向。2005年11月外務省を退職、同月より2010年10月までの5年間人間の安全保障ユニット課長を務め、2010年10月にパキスタン・イスラマバードの国連広報センター所長代行に就任。外務省での専門語学は英語、河野洋平外務大臣、田中真紀子外務大臣等の通訳を務めた。

講演要旨

田瀬和夫先生は、東京大学工学部を卒業後、同経済学部を中退し外務省に入省なさった。その後、緒方貞子氏の補佐官として活動なさるなど人間の安全保障に携わり、現在は国連広報センターで勤務なさっている。
 今回の講演では、田瀬先生ご自身がフロアに降りて、学生からの意見や質問にも対応するインターアクティブ形式で行われた。田瀬先生が以下の7つの問いを出席者に投げかけ、それぞれに関して答えていくという形で進められた講義はとても刺激的なものだった。
1 カジノでの必勝法は?
→自らがカジノの経営者になり、ルールを作っていくこと。最も重要なのはルールであり、国連でも同じことが言える。国連では特にアメリカ、イギリス、フランスがルール作りを主導するという認識を明確に持っているが、日本もこのルール作りに積極的に参加すべきだ。
2 ルール作りのルールは?
→自分が正しいと思うことをルールにすること。既存のルールを疑うことが必要。また、正義というのは相対的でしかありえないため、異なる正義の間では、最大公約数を見出すことが重要だ。
3 正義とは何か
→正義や生命の価値は相対的なもの。長期的に考えるか短期的に考えるかでも評価が変わってくるため、複数の時間軸をもつことが重要。長期的な正義は普遍的価値といえる。
4 人間の限界とは?(1)
→人間が想像出来ることは実現可能というフランスの小説家の言葉は、想像できないことは実現不可能であるという示唆を与える。したがって、限界はないと思い込むことが大事だ。
5 人間の限界とは?(2)
→しかし、人間が克服できない限界として寿命がある。このような限界の中で自分の生命資源を最大限に活用することが大事。
6 グローバル時代に求められる人材とは?
→日本社会では調整力や忍耐力を求められることがあるが、国際社会で特に求められる資質は、その場にいる人たちの意見の最大公約数を言葉で定義しプレゼンテーションする能力である。つまり、求められる資質は場合によって異なるため、それぞれの場で求められる人材になれる人材(メタ人材)を目指すべきだ。ここで注意しなければならないのは、“求める”人が必ずしも他人ではないかもしれないということである。自分がやりたいことを実現させるために必要な(求める)人材に、自らがなることもある。
7 何のために大学に入った?
→使命を見つけるため。そのために、幅広い視点を持ち、インターンなどに積極的に参加すべきだ。

(担当: 文科二類1年 方智賢、文科三類1年 吉越文)

講義の様子

Tase1
ご自身が国連に入ったのは国連憲章の理念を実現したかったからとお話しされ、やらなければいけないと思える自分自身の「使命を見つけよ」とのメッセージで締めくくられました。
Tase2
双方向的なものにしたいと、フロアに降りて学生と対話しながら講義を進められました。学生からも積極的な発言や質問があり、活発な議論がなされました。