2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

東眞理子(6月17日)

東 眞理子Mariko Higashi
国際金融公社(IFC) 投資環境局
水資源グループ 課長

北海道札幌市出身。上智大学外国語学部在学中にニュージーランドに留学したことがきっかけで、途上国の開発に興味を持つ。卒業後、ファーストシカゴ銀行東京支店に勤務。途上国絡みの仕事に繋がる可能性を探すべく、東京大学総合文化研究科大学院で修士号を取得。ロータリー財団奨学生として英国サセックス大学開発学大学院に留学、二つ目の修士号取得。ニューヨークの国連開発計画(UNDP)にJunior Professional Officer (JPO)として勤務後、東京に戻り、日本国際協力機構(JAIDO,会社は数年前に解散)で日本と途上国の合弁企業に出資をする仕事をする。1998年にワシントンDCにある世界銀行グループの国際金融公社(IFC)に転職、現在に至る。IFCでは信託基金局でドナーからの資金調達、中東北アフリカ局で地域戦略を担当、2012年4月から水資源グループの課長を務める。

講演要旨

 今回の講義では、国際金融公社(IFC)投資環境局で水資源グループの課長を務める、東眞理子先生にご講演いただきました。
 講演の前半では、まず先生が取り組んでいる水資源問題の現状を説明してくださいました。そして、世界地図や統計データを使いながら、水、食糧、エネルギーの三角関係を示してくださいました。1キロのコメを生産するのにどれくらいの水を使用するかなど具体例を挙げ、私たちにとって身近な食糧の生産に予想外に多く水が使われていることを分かりやすく説明してくださいました。
 また食糧生産と同様に、エネルギー生産にも多くの水が使われていますが、世界人口の増加のために食糧、エネルギーの需要増加が見込まれています。このような状況では、より少ない水でより多くの食糧を生産するイノベーションが必要とされることを指摘されていました。また、エネルギー生産が優先されたために食糧生産に使える水が制約された経験も挙げて、食糧、水、エネルギーの節約が密接に関連していることを示してくださいました。そして、現在議論されている技術的なイノベーションや国際河川の水資源管理といった問題は、日本にとっても重要だと仰っていました。
 東先生はIFCで、このような問題に取り組むための、水資源のアドバイザリーとしてお仕事をされています。IFCは特に途上国の民間企業に投融資を行っていますが、融資をするだけでなく、融資先となる企業へのアドバイザリーは重要な業務だといいます。
 IFCの活動紹介の後は、東先生御自身のキャリアを振り返っていただきました。これまでのキャリアは失敗続きだったと、先生は笑いながら仰ります。しかし、「失敗が次の機会に繋がる!」と、それぞれの失敗をどのように乗り越え、新しいキャリアを築いてきたのかをお話しくださいました。そしてこれまでの経験を経た現在においても、挑戦の連続だといいます。
 そこで先生は御自身の経験を踏まえ、グローバルに活躍する上でのアドバイスをくださいました。多岐にわたる問題領域がある開発分野では、問題ごとに「先進国」と「途上国」の境界線も常に変化しているため、そのような変化に柔軟に対応できる経験とスキルが必要とされます。そこで活躍するために重要な点を、(1)興味・情熱を持てるものを探す!(2)何かにたけていて良い仕事ができる、(3)リスクをとる、(4)語学とコミュニケーション能力は不可欠、(5)修士号が当たり前の世界になっている、(6)競争は激しいが視野を世界に広げれば機会も多い、(7)ネットワーキングが大切、として整理してくださいました。
 最後に、お仕事で訪問した様々な場所の写真を見せてくださりながら、それぞれの場所には写真には写らない多様な世界があると仰り、「外に出る!人と話す!音、温度、匂い(臭いも)を感じる!」ということの重要性も強調されました
 そして私たちに対する二つのメッセージでお話を締めくくられました。一つはガンジーの言葉で、“Always believe in your dreams, because if you don’t, you’ll still have hope”というものです。もう一つは次のようなものでした。“No Opportunities Wasted (NOW)!”

講義の様子

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我々が日常生活を送る中でどれほど水の恩恵を受けているのかを東さんが語られると、学生は驚いたような反応を見せていました。
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色々な感性を鋭くすること、外に出て、音や温度、においを感じることの大事さを伝えられました。