2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

高島宏平(6月9日)

takashima

高島 宏平(たかしま・こうへい)

オイシックス株式会社 代表取締役社長

 

神奈川県生まれ、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、外資系経営コンサルティング会社のマッキンゼー東京支社に入社。2000年5月の退社までEコマースグループのコアメンバーの一人として活動。
2000年6月に「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」を企業理念とするオイシックス株式会社を設立し同社代表取締役社長に就任。生産者の論理ではなくお客様の視点に立った便利なサービスを推進し、2013年3月に東証マザーズに上場。

また、2007年にはNPO法人「TABLE FOR TWO International」の理事となり世界の食糧問題へも積極的に活動を広げている。そして2011年3月の大震災後には、東日本の食をテーマに復興を目指す生産者と支援企業をつなぐプラットフォームを構築し、両者のマッチング事業を展開する一般社団法人「東の食の会」や、震災孤児や震災遺児をはじめとした被災児童に対してリーダーシップ教育を行う教育支援事業「BEYOND Tomorrow」の発起人・代表理事となり、復興支援活動を精力的に実施している。

 

【受賞】

2005年 日本オンラインショッピング大賞・グランプリ受賞

2006年 Entrepreneur Of The Year Japanファイナリスト

2007年 企業家ネットワーク主催「企業家賞」受賞

2007年 「ヤング・グローバル・リーダー2007」で世界のリーダー250人に選出される

2007年 起業家表彰制度「DREAM GATE AWARD 2007」受賞

2008年 「ポーター賞」受賞

2011年 日経ビジネスオンライン主催「CHANGEMAKERS OF THE YEAR 2011」受賞

2012年 世界経済フォーラムで、Global Growth Companyに選出される

【著書】

ライフ・イズ・ベジタブル―オイシックス創業で学んだ仕事に夢中になる8つのヒント

(2012年、日本経済新聞出版社)

【連載】

対談コラム「賢者の食卓」

(連載中、日経ビジネスオンライン)

講演要旨

今回はオイシックス株式会社の高島宏平代表取締役社長にお越しいただきました。
高島さんは、大学院時代に仲間とともに会社を立ち上げ、社会人になると当時の仲間と3年後に再び集まって起業することを決意。一旦マッキンゼーに入社したのち、オイシックス株式会社を設立されました。2007年には世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leadersの1人に選出されるなど、日本を代表する経営者として活躍なさっています。また、Table For Two International(TFT)の立ち上げにもご尽力され、現在も理事として活動を支えられています。最近注目を集めている特別栽培農産物・無添加加工食品の会社の経営者であり、駒場キャンパスのレストランでも導入されているTFTの理事とあって、会場にいた学生も強い関心示していました。

そんな高島さんが一番はじめに言われたことは、東大生は自分の人生の選択肢を自分で選び取ることが少ない、ということでした。成績が良いからこの高校、日本のトップだから東京大学など、深く考えることなく進路を歩んできた人が多く、意識して自らの道を選択していかなければ、誰かと同じ人生を歩んでしまうリスクが大きいとお話ししてくださいました。そして、ホールに集まった学生たちに向けて、「自分の意思で進む道を決め、人生のレールを踏み外そう」という熱いメッセージを送ってくださいました。
高島さんご自身も、マッキンゼーで働いていらっしゃった頃は、このままこの会社で与えられたレールの中から抜け出さず、ずっとここで頑張ってしまうのではないかという危惧があったそうです。そのため、自らレールを踏み外すための仕組みとして3年後に仲間と再び集結し、起業しようと決意したそうです。

次にオイシックスの説明をしてくださいました。
オイシックスはインターネットを通じて食べ物を届けるサービスであり、実際に農家さんとしっかり会い、安心安全の食べ物を扱っているとのお話でした。
安全に関しては、第三者による食質監査委員会まで設けておりとても徹底されているそうです。
しかし私にとって興味深かったのは、食の安全性で他からの差別化を図ろうとしているのではないということです。そもそも、すべての食品が安全であれば食の安全性が話題になる事自体がないのであり、この世から食の安全という言葉がなくなるぐらいが理想だとお話され、もっともであると頷く学生の姿が多く見受けられました。

続いてご自身の学生時代についてのお話を伺いました。
学生時代はとてもきついアルバイトをしたり、そこでの経験を活かしてイベント運営や国際会議を開催したり、とてもアクティブに活動されていたそうです。そのような経験は、もちろんその後の人生に大いに役に立っているそうですが、それほど重視していなかった大学での授業で学んだことが、思わぬところで役に立つことが多いそうです。それをうかがって、将来思わぬ方向へ活躍の幅が広がることもあるので、あまり視野を狭めず様々なことを貪欲に学んでいく姿勢がとても重要だと感じました。

学生時代にやっておきたかったけれど十分にできなかったこととして、高島さんは、時間と体力がないと行けないようなところに旅行に行き、何かを感じてくることや、語学・教養をしっかりと学ぶことを挙げていらっしゃいました。とくに学生のうちに旅に出て、人生を変えるかもしれない経験をすることは大事であると強調されていました。

最後に、「君たちは学生だから、失って困るものはほとんどないはずだ。行動できないのは失敗するのが怖いと思い込んでいるだけである。学生時代にしか出来ないこと、自分のやりたいことに、恐れずチャレンジしてほしい」との熱いメッセージで、とても興味深い講義をしめてくださいました。
質疑応答でも、多数の質問が出て、とても盛り上がりました。私自身が特に印象深く感じたのは、農業の知識をどのように獲得されたのかという質問に対する回答でした。高島さんは、当事者や詳しい人に直接聴きこむことで知識を獲得していったそうです。話を聞きながらしっかり客観的に分析することで、本やインターネットではなかなか簡単にはわからない業界の常識に触れ、しかも、それらを逐一疑ってみたそうです。常識と思われていることの中に、論理的に説明できないものがあり、そのような、「理由がないもの」こそビジネスチャンスに結びつく。そうおっしゃっていました。

(担当:文科二類1年 渋谷 幸人) 

講義の様子

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