2012小林りん(6月25日)
Kobayashi, Lin
公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団代表理事
経団連からの全額奨学金をうけて、カナダの全寮制インターナショナルスクールに留学した経験を持つ。その原体験から、大学では開発経済を学び、前職では国連児童基金(UNICEF)のプログラムオフィサーとしてフィリピンに駐在、ストリートチルドレンの非公式教育に携わる。2007年に発起人代表の谷家衛氏と出会い、学校設立をライフワークとすることを決意、2008年8月に帰国。
1993年国際バカロレアディプロマ資格取得、1998年東大経済学部卒、2005年スタンフォード大教育学部修士課程修了。
世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ2012」に選出。
講演要旨
今回の講義では公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)の準備財団代表理事である小林りん先生が公演してくださいました。小林先生はもともと日本の高校に通っていらっしゃいましたが、そこで日本の教育に疑問を感じたことがきっかけとなり、カナダにある全寮制のインターナショナルスクールに留学されました。ここで知り合ったメキシコ人の同級生の実家に夏休みに滞在した時に、身近に貧しいために教育を受けられない子供たちがいるという状況に衝撃を受け、教育のありがたさを実感されました。
将来は教育で恩返しをしたいと思うようになった先生は東京大学経済学部、スタンフォード大学修士課程で学ばれた後、2006年から2年間にわたってフィリピンでUNICEFのプログラムオフィサーとしてストリートチルドレンの非公式教育に携わられました。しかし、次第に国連でのこうした活動に限界を感じ始めた先生はもっと根本的なところでの改革の必要性を感じられ、あすかアセットマネジメント株式会社社長の谷屋衛氏との出会いをきっかけに学校の設立を決意され、2008年に帰国されました。
こうして「教育を通じて日本からアジアの未来に貢献したい」という思いをもとにISAKを設立された小林先生はExcellenceとEquityを重視され、アジアを中心として様々な国の、様々な経済状況にいる子供たちにサマースクールを通してリーダーシップ教育をされてきました。小林先生はリーダーシップのために必要なものとして、多様性、リスクを取る勇気、そして問題を設定する能力を挙げられます。そして、こういった能力を身につけるためにリーダーシッププログラムを時間割に組み込まれ、自己をしっかりと認識し、他者を尊敬し、強い信念を持つことの大切さを伝えていこうとされています。
小林先生ご自身もこのプロジェクトを通して、常に強い信念を持って取り組まれ、リーマンショックや東日本大震災など様々な紆余曲折を経つつも、プロジェクトの実現に向けて歩んで来られました。特に、2011年3月の東日本大震災の後は、復興だけでなくその先にある日本も考えて、リーダーシップを発揮できる人材を育成していく必要があるとの意見が強まり、生徒や保護者、経済界やメディアの応援を受けて急速に共感の輪が広がっています。
プロジェクトを通して、ご自身の体験を随所に生かしていらっしゃる先生は、講演の最後に「悲観は気分だが、楽観は意志である」という言葉を私達に贈られ、自分が楽観できる未来をつくっていって欲しいと述べられました。
(担当: 文科二類1年 浜野優希)
講義の様子
リーダーシップを構成する三つの層として、自己認識力・自己理解力、共感力・感謝力、忍耐力・突破力を挙げ、これらの能力を段階的に身につけられるようなプログラムをやっていきたいとお話していました。
ISAKのプロジェクトを始めようとしたのは、UNICEFの職員としてストリート・チルドレンの問題に関わったことを機に、「根本的な問題解決はないのか」という教育問題と、「自分だけにできることは何か」というプロフェッショナルとしての問題を考え始めたからだといいます。