2012松川智子(7月2日)
Matsukawa, Tomoko
世界銀行専務理事室プリンシパルSDN(Sustainable Development Network)担当官
東京大学教養学部教養学科国際関係論分科卒業。チェース・マンハッタン銀行勤務の後スタンフォード経営大学院で修士号(MBA)を取得。シティーコープで香港駐在の後モルガン・スタンレー東京支店で投資銀行業務に就く。1993年以降世界銀行ワシントン本店に勤務、プロジェクト・ファイナンス及び世界銀行保証業務を中心に開発途上国政府にアドヴァィス、途上国の経済発展に寄与。2012年より専務理事室に勤務し、インフラセクター (エネルギー、交通、水、情報・テレコム、都市開発)及び環境、民活インフラ (PPP)、民間資金の導入、ノレッジ戦略等の分野で世界銀行専務理事を補佐。
主書は
講演要旨
松川先生は講義において、①ご自身の経歴を確認した後に、②世界銀行の紹介と現在の開発援助問題の説明され、そして③国際機関で日本が影響力を持つためにはどうするべきかという問題を提起し、最後に④グローバルに活動するために重要点を挙げてくださいました。
松川先生ご自身は必ずしも国際的な家庭に育ったわけではなかったようですが、高校時代に米国へ留学したことで人生が一変し、その後通算25年間近く海外に在住することになったといいます。世界銀行への就職は投資銀行勤務時代に人に勧められことがきっかけと仰っていました。
その後、世界銀行の紹介をしてから、国際開発援助の実情を説明して頂きました。近年は、途上国が急速に成長していることから、今日の新しい開発問題に対応するため、従来の援助モデルを再考する必要性があると言います。そのような活動を遂行するために、世銀の職員には顧客のニーズに見合う専門知識が必要とされ、専門的即戦力と先進国で通用する知識が必要求されると言います。したがって、自分は何をもって開発途上国の経済発展に寄与できるかというSelling Pointが不可欠と仰っていました。
次に、国際政治の場という視点から国際機関を説明して頂きました。各国は国際機関をいかに活用して国益を追求するかを考え、様々な方法でアピールしていると言います。そのような状況で、日本が国際機関で影響力を持つために以下の点が必要だと説明なさいました。まず、国益の議論や国益を追求する戦略が必要だと強調されました。また、日本社会で見られる謙虚さはむしろマイナスであり、より積極的な英語でのコミュニケーション、プレゼンテーション、そして人的なネットワークを作る能力が必要だと仰っていました。
そして、ここまでのお話を踏まえた纏めとして、「グローバルな時代を生きるために」8つのポイントを挙げていただきました。すなわち、まず①実務経験であり、「石の上にも三年」として最低三年は一つの仕事に取り組むことが重要、②「この分野ではだれにも負けない」という専門性、③対人関係能力が社会では重要なため、IQよりもEQが大事、④英語力はミニマム不可欠、⑤国際機関への就職を考えるなら修士・博士号は必要、⑥日本企業で出来ることと外資系企業で出来ることを見極めること、⑦世界には多様な人々がいることを理解・認識し異なる国の人に対応できる交渉力、⑧勤務地を問わずグローバルな時代であり日本企業に就職しても海外赴任等の機会が訪れるため、その準備は重要ということでした。
最後に、世銀の所在地であるワシントンDCと、出張で訪問した世界中の街を紹介して旅行の楽しいお話をお聞かせ下さいました。
講義の様子
世界銀行が求める人材には専門知識が必要として、グローバル時代を生きるためには、「この分野では誰にも負けない」という専門性を身に付けることが大切だと話されました。