エアン・ショー(6月27日)
Heang Chhor
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社長
マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナー。マッキンゼーにおいて、フランスを始めとする欧州支社で17年にわたり活動した後、2006年7月に日本支社長に就任、現在に至る。
産業財メーカー、消費財小売、メディア、物流など、多岐にわたる業種の国際的な大手企業のクライアントに、コンサルティングサービスを提供している。コンサルティングでは、企業成長戦略、企業買収・提携、グローバリゼーション、マーケティング・営業、組織・文化、クライアントのスキル構築、業務改善などに取り組む。
これまで、フランスを中心とする欧州を始め、アジア、北米、南米など、世界の各地域でコンサルティングに携わってきた。
カンボジア生まれ、10代でフランスに移住。複数の企業において通算6年間の経営経験の後、1989年にマッキンゼー入社。フランス・パリESSECビジネススクールにて経営学修士を取得。
Heang Chhor is a senior partner at McKinsey & Company, and currently the head of McKinsey & Company, Japan. Prior to moving to Japan, he worked in McKinsey’s Paris office.
Heang has served top management at several large international companies whose businesses span a range of industries, including electronics, industrial equipment, consumer goods, retail, and logistics.
His experience covers topics such as growth, acquisitions and alliances, globalization, marketing and sales, organization, operational restructuring, and macroeconomics.
He has led and supported numerous clients in different parts of the world, including Europe – particularly France – Asia and Americas.
Heang was born in Cambodia. He joined McKinsey in 1989, after six years as a senior manager at various companies.
東大生へのメッセージ:グローバル人材の育成に向けて
日本は極めて豊かな文化と素晴らしい価値観を持つ、非常に良い国だと思います。特に、3.11の震災直後に日本人が示した強い団結力は世界中に感銘を与えました。
しかし、日本の若者は国内にずっと留まるのではなく、数年間は海外へ出るべきだと思います。その理由は大きく分けて2つあります。
1. 異文化に直接触れることの重要性
今ではインターネットで簡単に世界中の情報を入手できるようになったものの、日本から離れ、異文化を自分の肌で感じ取ることで、多くの実りある経験を積むことができます。
たとえば、目上の人と率直に意見を交わす、1日あたり200円未満の生活とはどのようなものなのかを体験する、人種の多様性がいかに創造力やイノベーションを生み出しているのかを感受する、など日本の生活では得られない経験から学びを得ることができ、スキルの幅も広がります。
特に、グローバル化が進む世界では、やりがいのある面白い仕事であるほど、世界中から優秀な人材が集まり、競争が激しくなります。そのような環境で今後何十年にもわたって成功を収めていくために必要となる能力を、海外で経験を積むことによって、より早く、より高く伸ばすことができるのです。
2. リーダーシップスキルの向上
日本の若者が海外経験を積み、スキルを高めることによって、日本にプラスの変化がもたらされます。
言うまでもなく、現在、日本は経済的、社会的に厳しい課題に直面しています。私は、企業のグローバル化による競争力強化、教育制度の見直し、女性が活躍できる環境作り、起業家精神の醸成などといった変化を起こすためのリーダーシップをもっと多くの日本人が発揮できれば、より明るい未来を創造できるのではないかと思います。
ただし、ここでの最大の問題は「何をするべきか」ではなく、「誰が、どうやってやるのか」です。
そこで、未来の日本を担う若者がグローバルな世界とより深いつながりを持ち、同じような状況にある国から学び、その経験を日本で活かすことで自信を深めていくことが重要になるでしょう。たとえば、1970年代・80年代と現在の日本と同じように経済的・社会的に非常に厳しい状況にあったものの、若い力を取り込みながら時間をかけてプラスの変化を生み出してきた英国の経験から学べることも多いのではないでしょうか。
私が知る限り、海外経験のある若者は、人並み以上のリーダーシップスキルを獲得してきているように思います。海外では、年齢を問わず、大胆な創造革新やリスクテイキングを奨励し、社会として斬新なアイデアを歓迎し、企業は若者に大きな責任を与える傾向があります。一方、日本の若者は誰でも大きなポテンシャルを持っているにも関わらず、日本の社会や企業は、必ずしも彼らにリーダーシップスキルを十分に身に付ける機会を与えていないように思います。
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海外で生活・仕事を体験することは、日本の未来のリーダーとなる若者が、国が必要とするリーダーシップスキルを伸ばす手段の一つです。そして、そのスキルを活かすことで、日本が再びかつての勢いや世界でのプレゼンスを取り戻すことに貢献できると同時に、国内外を問わず活躍の場を広げ、やりがいのある仕事に携わるチャンスを増やしていけるでしょう。
講演要旨
グローバルな才能の育成は、個人、そして会社の成長への最短の道である。間もなく全世界の雇用のうち半分がアジアで創出されようとする中で、日本での割合は低下する一方である。私の使命は、日本支社をグローバルに成功させること、一方で日本経済を救うこと、そしてクローバル人材の育成である。才能を構成する要素は、リーダーシップ能力、個人の評価、豊富な経験、専門的な技能、その土地への適応、人間関係の構築の6つに分類される。特に海外での経験こそがリーダーシップ能力を養う。興味ある分野で誰が重要人物かを意識して、場を共有するための人間関係を作ることも重要である。才能には、卓越した実行力、パイオニア、率先した行動力の3種類あり、自分はどれかを認識すべきである。人生とは過ちの連続なのだから、その教訓から学ぶことが大事で、リーダーとは、シンプルな事を選んで、他人のしないことを実行する人材である。まずは自分が何でイニシアチブがとれるか考え、何に関してでも良いので、他人のしないことをすることが最も大事である。
(担当: 理科二類2年 本多正俊志)
講義の様子
他の人ができないことで、自分ができることは何かを考えてほしい、というメッセージで講義を締めくくりました。
時間が足りなくなるほどの沢山の質問に一つずつ丁寧に答えていただき、活発な質疑応答になりました。