2014年夏学期 テーマ講義:東京大学教養学部

三谷宏幸(6月 6日)

Mitani, Hiroyuki

ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長

1953年生まれ
1977年 東京大学機械工学科卒業(工学学士) 
1983年 米国カリフォルニア大学バークレー校機械工学科(工学修士)
1984年 スタンフォード大学経営工学科(経営工学修士)
1977年 川崎製鉄株式会社
1988年 株式会社ボストンコンサルティンググループ
1992年 日本ゼネラルエレクトリック株式会社
1998年 GE航空機エンジン北アジア部門 社長
2002年 GE横河メディカルシステム株式会社 代表取締役社長
2007年5月~ ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長 (CEO)

推奨図書

『リーダーシップの旅 見えないものを見る』野田智義・金井壽宏著, 光文社新書
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』岩崎夏海著, ダイヤモンド社

著書・インタビュー記事

『外資系トップの仕事力 Ⅱ』ダイヤモンド社, 145-168ページ
『日経情報ストラテジー』2010年10月号
『Hay Group newsletter』 Vol.11, No. 1, 2010
*履修生はCFIVE参照

東大生へのメッセージ:「流れに掉さす人生を選ぶ」

学生の頃から、いつも私は何かを探していた。自分が本当にやりたいことは何なのだろう。仲間と遊び、本を読み、たまに勉強し、大手メーカーに入社した後もその葛藤は続いた。普通にやっていればサラリーマンとして成功する自信はあったものの、予定されている普通のことに満足できず、気が付くといつも流れに掉さす人生を選んでいたように思える。ただ、その半面、前向きに挑戦してきたからこそ身に着いたこともある。さて、これから皆さんは社会に出ると物事を理論的に考える力がとても重要になる。特に欧米では「あうん」の呼吸は通じない。ロジックがとても大切だ。しかし、同時に本質を見抜く「感性」も必要とされる。「感性」ということを説明するのは難しいが、ビジネスにとって必要不可欠な要素だ。当日は、日本企業、外資系企業それぞれで学んだことを紹介しながら、ビジネスにおけるグローバルな視点について、皆さんと一緒に話し合えることを楽しみにしている。

講演要旨

三谷さんの講演は主に、日本とグローバル社会における違いと、リーダーシップの二点についてだった。
日本の企業はチームプレーヤーの育成に重点を置く傾向があるのに対し、グローバル企業は格差の大きい個人プレーヤーの育成が重視されている。その思考の違いとして以下の点を挙げられていた。
日本では
・阿吽の呼吸で一足飛びに結論を導く
・標準化・公式化により正解が一つと考える
・知識偏重
・全体レベルの引き上げ
などが特徴であるのに対し、
グローバル社会では
・論理的思考を積み重ね結論を導く
・個性化により正解がいくつもあると考える
・知恵重視
・特殊性を許容する
などを特徴としているということである。
これらの点を踏まえて、今後の日本は競争力による差別化、変化への対応力、異質文化との共生を行い、日本だけで強いのではなく世界でも通用する企業を創っていく必要があるとおっしゃっていた。
リーダーシップについてのお話では、人々にブレーキをかけるのが役目で、言われたことを正しく行う存在である管理職とは異なり、リーダーはアクセルをかけるのが役目で、自分で正しいことを判断し、率先垂範していく存在であるということを強調しておられた。また必要な能力として、外部思考、明瞭な思考、想像力、包容力、専門性などを備えた上で、管理職としてよりもリーダーとして様々な場で活躍をしてほしいというメッセージを述べられた。そして最後に、ゼネラルエレクトリック社勤務時代の上司であったジャック・ウェルチの、「control your destiny or someone else will」という名言を私たち学生に向けて伝えて下さった。

(担当: 文科一類1年 山添慎一郎)

講義の様子


リーダーシップをとる上で必要な素質として構想力や粘り強さ等を挙げ、それらの中で自分の弱点を知って、それを長期的に変えていくことの重要性を述べられました。


日本の企業でエンジニアとして働いていたが、米国留学によって新しい可能性に気がついたというお話から始まり、いつも何かを探していたと、これまでの経歴を振り返る三谷講師。