榊原英資(4月18日)
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Sakakibara, Eisuke
青山学院大学 教授
元財務官
グローバル化が日本の大きな課題になってきています。多くの日本人は気付いていないのですが、日本は歴史上、異民族に一度も征服されたことのない特殊な国です。それゆえ平和で同質性が高いのですが、グロバール化には向いていません。どうしたら新しい時代の流れに対応できるのか深く考えていく必要があるのでしょう。
1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。
生年月日 昭和16年3月27日生
1. 学 歴
昭和39年3月 東京大学経済学部 卒業
44年5月 ミシガン大学経済学博士号 取得
2. 職 歴
昭和40年 4月 大蔵省入省(関税局国際課)
44年 7月 大蔵省 大臣官房秘書課財務官室付主任
45年 7月 大蔵省 大阪国税局豊岡税務署長
46年 9月 国際通貨基金(ワシントン)派遣職員
50年 7月 大蔵省 銀行局保険部保険第一課課長補佐
52年 8月 埼玉大学教養学部助教授
55年 9月 ハーバード大学客員準教授
56年 7月 大蔵省 大臣官房企画官
58年 4月 日本輸出入銀行 人事部付((財)国際金融情報センター総務部長)
60年 6月 大蔵省 理財局国庫課長
62年 7月 大蔵省 理財局資金第二課長
63年 6月 大蔵省 理財局国債課長
平成 元年 6月 大蔵省 理財局総務課長
2年 6月 大蔵省 東海財務局長
3年 6月 大蔵省 大臣官房審議官(国際金融局担当)
5年 7月 大蔵省 国際金融局次長
6年 7月 大蔵省 会計センター所長兼財政金融研究所長
7年 6月 大蔵省 国際金融局長
9年 7月 大蔵省 財務官
11年 7月 退官
11年10月 慶應義塾大学教授
18年 4月 早稲田大学教授
22年 4月 青山学院大学教授
3. 論文およびその他の著作等
・『インドIT革命の驚異』(共著)文春新書 平成13年5月
プロローグ・第1章:11-46
第4章・エピローグ:187-214頁
・『年金が消える』 (中央公論新社) 213頁 平成16年3月
・『本物の実力のつけ方』(東京書籍)和田秀樹共著 平成16年7月
・『榊原英資 インド巨大市場を読みとく』(東洋経済新報社) 吉越哲雄共著 平成17年5月
・『経済の世界勢力図』 (文藝春秋社) 平成17年6月
・『アジアは近代資本主義を超える』 (中央公論新社) 平成17年7月
・『インドを知らんで明日の日本を語ったらあかんよ』 (PHP出版) 平成17年11月
竹村健一氏との対談
・『人民元改革と中国経済の近未来』 (角川書店) 平成17年12月
・『食がわかれば世界経済がわかる』 (文藝春秋) 平成18年2月
・『黄金の人生設計図』 (中央公論新社) 平成18年6月
・『幼児化する日本社会』 (東洋経済新報社) 平成19年7月
・『日本は没落する』 (朝日新聞社) 平成19年12月
・『政権交代』 (文藝春秋社) 平成20年4月
・『没落からの逆転』 (中央公論社) 平成20年6月
・『大転換 パラダイム・シフト 世界を読み解く』(藤原書店) 平成20年6月
・『強い円は日本の国益』(東洋経済新報社) 平成20年9月
・『間違いだらけの経済政策』(日本経済新聞出版社)平成20年11月
・『榊原式 スピード思考力』(幻冬舎)平成20年12月
・『メルトダウン 21世紀型「世界金融恐慌」の深層』(朝日新聞出版)平成21年2月
・『大不況で世界はこう変わる!』(朝日新聞出版)平成21年7月出版
・『榊原式シンプル思考力』(幻冬舎)平成21年7月出版
・『知的食生活のすすめ』(東洋経済新報社)平成21年10月出版
・『君たちは何のために学ぶのか』(文藝春秋社)平成21年10月出版
・『日本人はなぜ国際人になれないのか』(東洋経済新報社)平成22年3月出版
・『ドル漂流』(朝日新聞出版)平成22年5月出版
・『フレンチパラドックス 経済の新世界勢力図』(文藝春秋社)平成22年6月出版
・『田原総一朗責任編集2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済』(アスコム)
竹中平蔵氏、田原総一朗氏との鼎談 平成22年6月出版
・『龍馬伝説の虚実』(朝日新聞出版)平成22年7月出版
・『世界同時不況がすでに始まっている!』(アスコム)平成22年12月出版
・『「日本脳」改造講座』(祥伝社)平成22年12月出版
講演要旨
榊原英資先生の講義テーマは「日本の発信力」についてであった。発信力とは文化・経済など多岐に渡る。歴史的に見て、日本は受容することこそ多かったが、発信していくことは少なかったという。例えば、中国文明の摂取、明治期の西欧文化の吸収がある。一方で日本は発信していくことはなかったという。というのも、日本は自らの強みを知ることがなかったからだという。日本は古来より他国の文化を吸収してはきたが、他国の特徴を見て、自らの特徴を知ることは無かったのだ。日本の強みを「発信」をしていくには、他国との比較から、自国のポジションを知ることが大切だという。そのための手段として、榊原先生は留学をするようにと学生に訴えかけていた。そうすることで、日本の「強み」を知れるのだという。
(担当: 文科二類2年 原田泰直)
18号館ホールは今日も満員。
これまでの経歴や世界で活躍する上でのヒントについて、さまざまな例をあげて語っていただきました。磊落なトークに会場が湧く場面もしばしば。
講義後のディスカッションまとめ
榊原氏は講演中、日本では翻訳文化が浸透しすぎたあまり、日本人には外国語で何かを議論
する上で必要な「発信力」が欠けていると指摘し、「発信力」をつける上で、英語力を磨くだけでなく、自国と他国双方の文化についての研鑽を積むべきだと強調されていた。
そこで、講演後に予定していた有志の学生によるディスカッションのテーマには、「日本人が国際人になるためには?」という、やや抽象的で誰もが意見を述べやすく、また榊原氏が指摘した「発信力」といった論点も絡めやすいと思われるものを設定した。
実際のディスカッションでは、まずこの漠然としたテーマについて議論する起点として、外国人に比べ日本人が優れている点と劣っている点を列挙してもらった。前者については、「丁寧」であるや「こだわりの強さ」などの点が挙げられ、後者では、「内向的」であるや「外国人の立場を理解するのが苦手」であるなどの点が挙げられた。
その後、先ほど挙げた日本人の特徴のうちで、劣っているとされる点はいかにして改善できるか、という議論に移った。ここでは、「外国人の理解が苦手」なのは、日本人が、海外に出て他国文化を理解しつつ、自国文化についての理解を試みることに対し、その「内向きさ」ゆえに消極的である、という方向に向かった。
では、その「内向的」な性格をいかに改善するべきか?これに対する提言が、今回のディスカッションの着地点となるのではないか?そこで、日本人の「内向き」な性格の原因を議論すると、主な原因は日本人の英語力の欠如にあり、しかも英語力が伸びないのは、美点であるはずの「丁寧さ」や「こだわりの強さ」が、かえって発言する意欲を削いでいる点にあるとなった。そして、今回のディスカッションでは、日本人同士でできるだけ英語で会話する機会を設け、ブロークンでも良いから英語で発言する姿勢を身につけよう、という結論に至った。
(担当: 文科一類1年 白石智寛)